用語解説

2025.04.30

今さら聞けない税金における「控除」とは? 意味や種類まで徹底解説!

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目次

1.控除とは

税制における控除(以下、単に「控除」とします)とは、納税者が支払う金額を軽減するための制度です。控除を利用することで、最終的な税負担を軽減し、納税者の手取り収入を増やすことができます。控除にはさまざまな種類があり、所得や特定の条件に応じて適用されます。これらの制度を理解し、適切に活用することで、節税効果を最大限に引き出すことが可能です。

 

控除の基本的な意味

「控除」とは、税金を計算する際に課税対象となる所得や税額から、あらかじめ決められた一定金額を差し引くことで、最終的に納税額を軽減する仕組みです。このような控除制度は、個人の生活状況に応じて適用され、収入が多いか少ないかにかかわらず一定の負担軽減が期待できます。

控除の具体例としては、所得から特定金額を差し引く「所得控除」や、税額そのものを減らす「税額控除」が挙げられます。これにより、納税者は医療費、住宅ローン、家族の控除など、生活環境に応じた支出に対して負担軽減を受けることが可能です。控除制度をうまく活用することで、生活に必要な支出が多い家庭ほどその効果を感じやすくなります。

 

控除が必要な理由

控除は、私たちの生活負担を軽減し、税金負担の公平性を確保するために導入されています。例えば、医療費や教育費、住宅ローンなどの支出がある家庭では、その負担に応じて税金の控除を受けることができ、個人の経済的負担を軽減することができます。

家族を扶養している場合や、医療費が多くかかったりする場合に、控除を受けることで税負担が和らぎます。これにより、納税者の​​収入に応じた支出を補い、生活費や医療費などの負担を軽減できます。

 

控除と還付の違いとは

控除と間違いやすい言葉に、還付があります。「還付」とは、すでに支払った税金の一部が払い戻されることです。支払税額が過剰である場合、還付が行われます。控除は納税する前に差し引く、還付は納税後に返還されるという違いがあります。

 

控除 課税対象となる所得や税額から、一定金額差し引くこと
還付 納めすぎた税金が返還されること

 

2.「所得控除」と「税額控除」

所得控除と税額控除の違い

税金の控除には、所得から差し引く「所得控除」と、税額から差し引く「税額控除」があります。どちらも異なる仕組みで税負担を軽減する控除制度です。

 

所得控除


所得控除は、課税対象となる「所得」から一定額を差し引いて課税所得を減らします。結果的に支払う税金を軽減する仕組みです。所得控除は、基礎控除や医療費控除、配偶者控除などが該当し、個人や家庭の生活状況に応じた控除が設けられています。

 

 

 

税額控除


税額控除は、所得税や住民税などの納めるべき最終的な税額から一定額を直接差し引く方法です。所得控除と異なり、計算された税額そのものを直接軽減するため、場合によっては所得控除よりも大きな税負担軽減効果が期待できます。例えば、住宅ローン控除や寄付金控除などが該当し、支出に応じて税額そのものが減少します。

 

 

 

3.所得控除とは

代表的な所得控除

所得控除は全部で15種類あり、納税者の​​家族構成や生活状況に応じて適用され、税負担を軽減する仕組みがあります。代表的な所得控除の例を紹介します。

 

 

1.基礎控除

基礎控除は、原則としてすべての人が適用できる控除です。収入に応じて適用され、現在の制度では最大48万円の控除が認められています。所得税負担を軽減できる仕組みです。

 

2.配偶者控除

配偶者控除は、納税者に配偶者がいる場合に適用されるので、配偶者の収入が103万円以下であることが条件です。

 

3.配偶者特別控除

配偶者の収入が103万円を超える場合でも、一定の範囲内(150万円以下など)の場合は「配偶者特別控除」が適用でき、段階的に控除が受けられる仕組みです。

 

4.扶養控除

扶養控除は、16歳以上の家族がいる場合に適用されます。例えば子どもや高齢者の親など、生活を支えている家族がいる場合、1人あたりの状況に応じた控除が受けられます。控除額は一般扶養親族で38万円、特定扶養親族(19歳〜22歳)で63万円となります。

 

5.医療費控除

医療費控除は、年間に支払った医療費が定額以上である場合に適用されます。年間医療費が10万円(または合計所得金額の5%)を超えた場合、その超えた分が医療費控除の対象です。通院費や薬代など、医療費に該当する範囲が広いため、医療費が一定額を超えた場合に利用できる控除です。

 

6.社会保険料控除

社会保険料控除は、健康保険や年金などの社会保険料を支払っている場合に適用されます。 給与天引きされるものも含め、支払った保険料の金額が所得控除の対象です。本人だけでなく、家族のために支払った保険料も控除対象になります。

 

7.生命保険料控除

生命保険料控除は、生命保険や個人年金、介護医療保険に加入している場合に適用されます。支払った保険料に応じて一定額が所得控除として認められます。一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3つに分けて、それぞれ最大4万円、合計で最大12万円の控除の対象となります。

 

8.寡婦控除

離婚や死別によって配偶者がいない女性に適用される控除です。

 

9.ひとり親控除

男女問わず、ひとり親の家庭に適用される控除で、控除額は35万円です。

 

10.勤労学生控除

勤労学生に適用される控除で、最大27万円の控除の対象となります。

 

11.雑損控除

自然災害や盗難などで資産に損失があった場合に適用されます。

 

12.小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に適用されます。将来の資産形成を支援する制度です。

 

13.地震保険料控除

特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合に適用されます。最大5万円の控除の対象となります。

 

14.ふるさと納税(寄附金控除)

ふるさと納税など、ご自身の選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度です。

 

15.障害者控除

納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に適用されます。控除額は一人あたり27万円(特別障害者は40万円)です。

 

※参照:国税庁HP

 

 

所得控除の計算方法

所得控除の計算方法は、納税者の収入から一定の金額を差し引くことで課税対象所得を減少させる方法です。控除の種類ごとに異なる計算方法が適用されます。

例えば、医療費控除の場合は、年間の医療費が自己負担額の一定額(総所得の5%または10万円)を超えた分が控除されます。所得控除は確定申告の際に申請し、適用条件を満たすことで、税負担の軽減につながる場合があります。

計算方法

医療費控除額は、以下の計算式で求められます。

 医療費控除額=1年間に支払った医療費−保険金等で補填される金額−10万円(または総所得の5%の低い方) ※ 控除上限額:200万円

 

 

4.税額控除とは

税額控除の仕組み

税額控除は、所得税額から一定金額を控除するものです。課税所得に税率をかけて算出した税額から控除されるため、実際の税負担を大幅に軽減することが可能です。

 

税額控除の適用要件

税額控除にはそれぞれ適用のための条件が定められており、控除を受けるためにはその要件を満たしている必要があります。例えば、住宅ローン控除の場合、購入した住宅が一定の面積以上であることや、居住期間が一定以上であることが求められます。税額控除を受ける場合は、事前に条件を確認し、確定申告時に必要な書類を準備しておくことが重要です。

 

代表的な税額控除

税額控除の代表的な例を紹介します。

 

 

1.(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

 

住宅ローン控除は、住宅ローンを借り入れて住宅の新築・取得または増改築等をした場合、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度です。

控除される金額が多いため、住宅購入者には大きな税額控除となります。

 

2.配当控除

配当控除は、株式や投資利益の配当金を受け取った場合に適用され、二重支払いを回避するための控除です。この控除は、総合課税を選択した場合に適用される仕組みとなっています。配当金に課される税や住民税を軽減する目的で導入され、所得税では最大10%、住民税では最大2.8%の控除があります。

 

3.寄附金控除(ふるさと納税など)

寄附金控除は、地方自治体や認定NPO法人への寄附に対して適用されます。 ふるさと納税では、寄附額から自己負担の2000円を差し引いた金額が控除対象となり、特産品を受け取れるのも特徴です。寄附金控除には上限額があり、所得によって異なります。上限額を確認した上で寄附を行うことが重要です。

 

4.小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金が対象なる控除制度です。ただし、両者は異なる制度であり、加入要件も異なります。

iDeCoの場合、掛金全額が控除され、年末調整や確定申告をすることで所得税が還付され、翌年の住民税が軽減されます。さらに、運用益は非課税となり、老齢給付金を受け取る際にも税制優遇を受けられるため、大きなメリットがあります。ただし、加入時や運用時に手数料がかかる点には注意が必要です。

 

 

 

5.控除を受けるためには?

控除を受けるためには、年末調整や確定申告などの手続きが必要です。給与所得者と個人事業主で手続き方法が異なります。

 

給与所得者の場合

 

会社員やアルバイト、パートなど給与を受け取っている人は、年末調整で控除の手続きをします。年末調整とは、給与から天引きで徴収された税額の年間合計額と、本来の税額を一致させるための精算手続きのことで、会社が行います。

 

年末調整での控除申請方法

年末調整の際に、会社から渡される「扶養控除等申告書」に記入し、必要書類と共に提出します。医療費控除や住宅ローン控除など、控除対象項目を申請するためには、証明書や明細を添付することが求められます。

確定申告が必要な控除

 

注意点としては、医療費控除、ふるさと納税などの寄附金控除、雑損控除は年末調整では申告できないので、年末調整をした場合も自分で確定申告が必要です。

また、ふるさと納税には確定申告が不要になるワンストップ特例制度があります。ただし、医療費控除など何らかの確定申告を行った場合は、ワンストップ特例制度を利用していても、医療費控除などで確定申告を行う場合は、ふるさと納税についても確定申告が必要になります。

個人事業主の場合

個人事業主は、年末調整ではなく、確定申告を通じて控除を申請します。確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の収入や支出を基に計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に提出します。この際に、適切な控除を申請することで、所得税の還付を受ける可能性があります。

確定申告での控除申請方法

確定申告を行うのは、個人事業主の場合や年末調整で申告できない控除がある場合です。確定申告では、必要書類を揃えて申告書を提出します。確定申告書は税務署へ提出しますが、e-Taxでの申告も可能です。確定申告の結果、納め過ぎた税金がある場合は、指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。具体的には、医療費控除や寄付金控除など、所得控除を受けるための証明書や明細書を用意します。また、税額控除を申請するためには、住宅ローン控除や配偶者控除などに関する証明書を提出する必要があります。

 

控除申請時の注意点

控除を申請する際には、いくつかの注意点があります。これらのポイントをしっかり抑えることで、適切に控除を申請することで、税負担の軽減につながる場合があります。

証明書類の準備

控除を受けるためには、正確な情報と証明書類が揃っていることが重要です。

例えば、医療費控除では、医療費控除の明細書の添付が必要です。また、社会保険料控除の場合は、社会保険料を支払った証明書、住宅ローン控除の場合は、ローン残高証明書が必要です。

これらの書類を事前に用意しておくことが重要です。

 

控除額の上限を確認

控除には上限が設定されている場合があります。例えば、医療費控除では支払った医療費が一定額を超えた場合にのみ控除が適用されます。また、住宅ローン控除にも上限額があるため、上限額や計算方法について、事前に確認しておくとよいでしょう。

 

申告期限を守る

確定申告には提出期限があり、期限を過ぎると、延滞税や加算税の対象となることがあります。申告書を提出する前に必要書類を全て確認し、期限を守って申告を行いましょう。

 

必要書類の保管

申告後に税務署から確認が入ることもあります。その際には、申告後に税務署から確認を求められることがあるため、関連書類や領収書を一定期間保管しておきましょう。

 

 

 

6.まとめ

控除制度は、納税者の税負担を軽減するために非常に重要な役割を果たします。所得控除や税額控除など、さまざまな種類の控除を適切に活用することで、税金の負担を軽減する可能性があります。例えば、医療費控除や住宅ローン控除などは、適用条件を満たすことで、節税につながる場合があります。

控除を受けるためには、必要な書類を整えて申請を行うことが求められます。給与所得者と個人事業主では申告方法が異なるため、自分の立場に合った手続きが必要です。年末調整や確定申告の際には、適用可能な控除について事前に確認し、必要に応じて申請しましょう。

 

また、税制は時々変更されることがあるため、定期的に最新の情報を確認することをお勧めします。税金に関する知識を深め、適切な手続きをすることで、納税者はより有利に税制を利用することができ、結果的に税負担を軽減し、生活にゆとりを持つことができるでしょう。

 

自分の状況に合った適切な控除制度の利用は、家計を助け、より豊かな生活につながる可能性があります。

 

※参照:国税庁HP

 

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