用語解説
2025.03.26
現代のグローバルな経済において、「為替」という言葉を耳にする機会が増えています。「為替」とは、現金の代わりに手形や小切手、証書などで決済を行う方法で、私たちの日常生活や世界経済に大きな影響を与える重要な仕組みです。この記事では、為替市場の仕組みやレートの変動、取引方法からリスク管理まで、初心者でも理解できるようにわかりやすく解説しています。為替取引に興味がある方にとって、実践に役立つ知識です。
前回の記事<為替知識①>では、為替の基本的な仕組みや市場の役割について解説しました。 今回は、それを踏まえて、実際の為替取引の仕組みや、為替を管理する方法について具体的に考えていきます。理解した上で、次のステップとして実践的な知識を見ていきましょう!
為替取引には、FX(外国為替証拠金取引)と外貨預金が代表的な選択肢として挙げられます。FX(外国為替証拠金取引)と外貨預金は、どちらも為替取引の手段ですが、性質が大きく異なります。
FX(外国為替証拠金取引)は、株式投資のように、売買の都度、代金を受け渡すのでばなく、決済により生じた損益(差額)のみを受渡す差金決済を行う取引で、米ドルやユーロ、日本円などの主要国通貨の売買を通じ差益を狙う投資手法です。
さらに、FXでは2国間の金利差による利益(スワップポイント)を得られる可能性 もあります。特に、近年は世界的な利上げによって日本と海外の金利差が拡大しており、この金利差を狙う投資家も増えています。
FXは、少額の証拠金とわずかな為替レートの変動で大きな利益を得ることが可能となるレバレッジ取引が特徴的ですが、一方で証拠金を超える大きな損失が生じるレバレッジによるリスクがあります。例えば、10万円の資金で10倍のレバレッジを利用すれば、100万円分の通貨を取引可能です。
ただし、レバレッジ取引は大きな利益を得ることが期待できる一方で、レバレッジを利用することで損失が大きくなるリスクがあります。(レバレッジリスク)
また、FXは基本的に24時間いつでも取引が可能です。
大きな価格変動を予測するためにも、リアルタイムの経済ニュースや大きな価格変動等を予測する上でも、経済関連ニュースサイトやアプリを利用することで、比較的簡単に情報を入手することができます。FXを行う場合は、経済ニュースをこまめにチェックし、できるだけ多くの情報を把握しましょう。基礎的な知識、FXに慣れていない段階では(ある程度の取引知識や経験も必要)、できるだけ小額取引を心がけることをおすすめします。
*レバレッジとは、一般的に、取引に必要な証拠金(=現金担保)は、取引金額よりも小さくなるので、少ない資金で大きな金額の取引を行うことができます。
外貨預金とは、ドルやユーロなど外国通貨で預金をする方法です。円安時に利益を得られる可能性があり、分散投資の手段として人気があります。一方、為替リスクや手数料が発生するため、注意が必要です。
例えば、円高になると外貨預金の価値が下がり、預金の利息にも税金がかかるため、損失が出ることもあります。
※但し、外貨を円貨に換金する際は為替手数料を考慮する必要があります。
*為替差益とは、外貨建取引や外貨預金などで、為替レートの変動によって生じる利益のこと
為替チャートは、為替市場における通貨の価格変動を視覚的に示したグラフです。このチャートを活用することで、初心者でも過去のデータを分析し、長期的なトレンドを把握することで、市場の動きを理解しやすくなります。ここでは、チャートの基礎とその利用方法について解説します。
為替取引を始める際には、チャートの使い方を理解することは欠かせません。チャートは為替レートの動きを視覚的に示し、市場傾向や取引タイミングを把握する助けとなります。チャートは、通常、縦軸に為替レート、横軸に時間を配置しています。これによって、市場が買い手優位なのか売り手優位なのかを判断する材料となります。
代表的なチャートの種類には、以下のようなものがあります。
ローソク足チャートは、1本の棒で1日や1時間の値動きを表し、始値、終値、高値、安値の4つの情報を示します。そのため、価格の変動幅や勢いを直感的に把握できるのが特徴です。相場の動きや市場の細かい動きを分析する際に有用です。
また、過去のデータも含めて一目で値動きの推移を把握できるのがローソク足の特徴です。
実体部分(棒の実体部分): 開始値と終値の差を示します。 価格の上昇(陽線)は緑(青)、価格の下降(陰線)は赤などで色分けされることが多いです。
ヒゲ部分(上下の細い線): 一定期間内の最高値と最安値を示します。
ラインチャートは、足種ごとに終値のみをつなげた最もシンプルなチャートです。価格の長期的なトレンドの大まかな流れを把握しやすい反面、短期的な価格変動は捉えにくいです。複雑なデータを省略したい場合に便利です。
バーチャートは、一定期間の高値・安値・終値の3本値の推移を示すチャートです。棒の両端が高値と安値、横線が終値を表します。
例えば、ローソク足チャートは、短期的な取引に向いていますが、ラインチャートは長期的なトレンドを把握する際に便利です。
為替チャートを分析する際は、価格の動きだけでなく、過去のトレンドや反転ポイントにも注目することが重要です。その中でも「サポートライン」と「レジスタンスライン」の確認が基本です。
サポートラインは価格が下落してきた際に反転しやすい価格帯、レジスタンスラインは上昇してきた際に価格が反転する可能性が高い価格帯を示します。これらを把握しておくことで、価格が反転するタイミングを予測しやすくなります。
・サポートライン 価格が下がりにくいラインで、反発の目安になります。
・レジスタンスライン 価格が上がりにくいラインで、反落の目安になります。
チャートでは、相場が上昇、下降、横ばいのどの方向に向かっているかを確認します。トレンドラインを引くことで、相場の方向性が明確になり、次の動きを予測しやすくなります。
テクニカル分析は、過去の価格データを基に今後の価格の動向を予測する方法です。初心者にも使いやすいテクニカル指標として、価格の推移をグラフ化した「チャート」などを用いて、その先の値動きを予測するもの。移動平均線(MA)や相対力指数(RSI)が挙げられます。
移動平均線(MA)は、一定期間の価格平均をラインとして表示し、トレンドの方向性を把握するのに役立ちます。例えば、50日移動平均線は過去50日間の終値の平均をつないだ線です。価格が移動平均線を上回ると上昇トレンド、下回ると下降トレンドと判断できます。
また、相対力指数(RSI)は相場の過熱感や冷え込みを示し、買われ過ぎや売られ過ぎの状態を読み取るために使われます。これらを活用することで、トレンドの転換点を察知しやすくなります。
為替の過熱感を示す指標で、0から100の範囲で表示されます。70以上は「買われ過ぎ」、30以下は「売られ過ぎ」を意味し、トレンドの転換点を予測する際に利用されます。
過去の為替チャートを分析することで、長期的なトレンドや市場のパターンを理解することができます。
例えば、2008年のリーマンショック後には世界的な経済危機が発生し、多くの投資家がリスク回避のために日本円を買い、急激な円高が起きました。このように、経済危機や各国の金融政策によって為替レートは大きく変動します。
初心者がチャートを理解するためには、過去のレートの推移を確認し、市場全体の傾向をつかむことが必要です。チャートを観察することで、現在の市場状況を理解し、今後の変動を予測する力を養うことができます。
ドル円レートは、経済指標や金利の差、地政学リスクなどさまざまな要因で変動します。
・経済指標:GDP成長率や雇用統計などの重要な経済指標は、その国の経済の健全性を示します。これらの指標が発表されると、市場は即座に反応し、為替レートに影響を与えることがあります。
・金利の差:アメリカと日本の金利差は、投資のリターンを左右します。一般的に、金利が高い国の通貨に投資が集まりやすくなります。例えば、アメリカの金利が上昇すると、投資家は高いリターンを求めてドルを買うため、ドル高・円安の動きが生じやすくなります。
・地政学リスク:地政学的な緊張や紛争が発生すると、投資家はリスク回避のため、安全資産とされる円などに資金を移す傾向があります。その結果、円高が進む可能性があります。
例えば、アメリカが利上げを発表すればドルの需要が高まり、円安・ドル高の傾向になることがあります。一方、日本が金融緩和を続ける場合も円安が進みやすくなります。
相場を予測するには、過去の推移を確認することが有効です。ドル円レートのチャートを分析することで、長期的なトレンドや短期的な変動を把握できます。ただし、為替市場は変動要因が多く、予測が難しいため、さまざまなシナリオに備えることが重要です。
投資においてリスク管理は非常に重要です。特にFXや外貨預金では、予想外の為替変動により大きな損失を被る可能性があります。これを防ぐためには、以下の方法が有効です。
1.ストップロス注文の設定
損失を一定範囲内に抑えるために、事前に損失許容額を決めて、設定値に達したら自動的に損切りを行う「ストップロス注文」を活用しましょう。
2.レバレッジを低く抑える
FXなどでは、レバレッジを高く設定すると損益が増幅されるため、リスクを抑えるためには低いレバレッジを選択することが重要です。
3.資金の分散投資
投資対象を分散させることで、特定の市場や銘柄の価格変動リスクを分散できます。例えば、複数の通貨ペアや異なる投資商品を組み合わせることで安定性を図ります。
チャートを使った分析を実践する際には、経済指標の発表にも注目しましょう。経済指標は、各国の経済状況を示すデータであり、市場に大きな影響を与えます。
例えば、アメリカの「雇用統計」や「GDP成長率」の発表はドル円相場に直接的な影響を及ぼします。雇用統計で雇用者数が予想を上回れば、アメリカ経済の好調を示し、ドル高円安になる可能性があります。
また、日本の「消費者物価指数(CPI)」はインフレ動向を示し、日銀の政策に影響を与えるため注目されています。
これらの指標の発表後は、価格が大きく変動することがあるため、チャートを活用してタイミングを見極める必要があります。これらの指標を把握しておくことで、相場の変動要因を理解し、適切な取引判断ができるようになります。経済指標の発表スケジュールや結果をチェックすることで、相場の動きやトレンドを予測しやすくなり、リスク管理にも役立ちます。
初心者が為替取引を始める際には、以下のステップを参考に進めましょう。
1.取引目的を明確にする
短期的な利益を狙う場合はFX、長期的な分散投資を目的とする場合は外貨預金が適しています。自分の投資目的を明確にすることで、適切な方法を選べます。
2.取引口座を開設する
日本国内のFX会社であれば、金融商品取引業の登録がある業者を選ぶと安心です。
3.デモトレードで取引の感覚を掴む
本格的に資金を投入する前に、デモトレードを活用して取引の流れを学びましょう。 実際のお金を使わずに練習できるので、基礎を学ぶのに最適です。
4.少額から実際に取引を開始する
取引の仕組みを理解したら、少額の資金で取引を始めてみます。 小さなロスでもリスクを抑えられ、心理的な負担も軽減できます。
5.チャート分析を学びながら取引を行う
市場の動向や経済ニュースを定期的にチェックし、判断材料を増やしましょう。為替取引では、チャート分析が重要です。ローソク足や移動平均線などの基本的な指標を学び、相場の動きを読む力を養いましょう。
今回の記事では、為替取引の種類や始め方、為替分析の基礎、リスク管理の方法について解説しました。初心者が為替取引を始める際には、まずは自分の投資目的を明確にし、少額から始めて取引また、為替チャートを活用した分析や、経済指標を把握することで、相場の動きを予測しやすくなり、取引の精度を高めることができます。また、初心者は外貨預金やFXを始める際、リスク管理を徹底し、少額取引からスタートすることが大切です。市場の動きを観察しながら、着実に知識を蓄えましょう。
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