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2026.08.19
大胆な投資促進税制の正式名称は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。
企業が一定の要件を満たす設備投資計画を作成し、国の確認を受けたうえで設備投資を行うことで、即時償却または税額控除を利用できます。
制度の大まかな流れは次のとおりです。
1.設備投資計画を策定する
2.国へ確認を申請する
3.投資計画について確認を受ける
4.確認を受けた日から5年以内に設備投資を行う
5.即時償却または税額控除を適用する
確認申請の受付期間は、2026年7月31日から2029年3月31日までです。

出典:経済産業省「経済産業省の取組について」
今回の税制は、単に企業の税負担を軽くするためだけの制度ではありません。大規模で高付加価値な国内投資を促進し、日本企業の競争力や生産性を高めることを目的としています。
近年は、AIの普及やGXの推進、サプライチェーンの変化などを背景として、次のような分野で大規模な投資が求められています。
しかし、工場やデータセンターなどの整備には、土地や建物、機械設備などに多額の資金が必要です。本制度は、こうした企業の投資初期における税負担を抑え、国内での大型投資を決断しやすくする仕組みといえます。
本制度の大きな特徴は、対象となる投資規模の大きさです。
対象となる投資計画には、原則として次のような要件が設けられています。
このほかにも満たすべき要件があるため、設備を取得するだけで自動的に税制措置を受けられるわけではありません。
一方で、これほど大きな投資を対象として、建物を含む即時償却または税額控除を選択できる点は、企業の大型投資を後押しする大きな材料となり得ます。
半導体メーカー、自動車メーカー、データセンター事業者など、国内で数十億円以上の設備投資を計画する企業にとって、注目度の高い制度といえるでしょう。
一定の要件を満たした設備投資については、即時償却または税額控除のいずれかを選択できます。
| 税制措置 | 概要 | 主なメリット |
| 即時償却 | 対象設備を取得等し、事業の用に供した年度に、取得価額をまとめて減価償却※する | 取得年度の課税所得を圧縮し、投資初期の税負担を抑えやすくなる |
| 税額控除 | 対象設備の取得価額の一定割合を法人税額から控除する | 法人税額を直接減らす効果が期待できる |
税額控除率は、原則として取得価額の7%とされ、建物、建物附属設備、構築物については4%とされています。ただし、控除上限などの要件があります。また、一定の法人は税額控除による控除をしてもなお控除しきれない金額を翌期以後3年間繰り越すことができます。
※減価償却・・・設備の購入費用などを、数年に分けて経費として計上する会計処理のこと
通常、建物や機械設備の取得費用は、法定耐用年数に応じて複数年に分けて減価償却します。
即時償却を適用すると、対象となる取得価額を取得年度にまとめて減価償却できるため、その年度の課税所得を大きく圧縮できる可能性があります。これは税金そのものが永久に免除される仕組みではなく、将来計上する予定だった減価償却費を前倒しするものです。
それでも、大型設備の導入直後に税負担を抑え、手元資金を確保しやすくなることは、企業のキャッシュフローにとって大きなメリットとなります。

なお、本制度の適用を受ける場合、確認を受けた投資計画の期間中は、中小企業経営強化税制、地域未来投資促進税制、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の設備投資税制は利用できません。
本制度の対象となる主な資産は次のとおりです。(一定の金額基準あり)
特に、建物が対象に含まれる点が特徴です。工場や物流施設、データセンターなどは、機械だけでなく建物そのものにも多額の投資が必要となります。
そのため、建物まで対象となることは、大型プロジェクトの投資判断に影響を与える可能性があります。ただし、対象資産を取得するだけでは制度を利用できません。投資規模や投資利益率などの要件を満たした計画について、事前に国の確認を受ける必要があります。
本制度によって恩恵を受ける可能性があるのは、設備投資を行う企業だけではありません。
大型投資が実行されると、土地の取得、建物の設計・建設、機械設備の製造、電気工事、保守管理など、さまざまな取引が生まれます。
そのため、次のような業界への波及が期待されます。
例えば、新しい工場を建設する場合、設備を導入する企業だけでなく、用地を提供する不動産会社や、工場を建設する施工会社、機械を製造する設備会社などにも事業機会が生まれます。
つまり、本制度は一社の税負担を軽減するだけでなく、国内で大型プロジェクトを動かし、関連産業のビジネス拡大につながる可能性を持っています。
企業の設備投資が増えると、その設備を設置するための土地や建物への需要も生まれます。特に、工場、物流施設、データセンターなどの開発では、まとまった規模の土地に加え、電力供給や交通アクセスなどの条件を満たす不動産が必要です。
こうした大型投資が増加すれば、事業用地の取得や施設開発が進み、不動産会社や開発事業者に新たな事業機会が生まれる可能性があります。
また、GXの推進に伴い、系統用蓄電池をはじめとしたエネルギー関連事業への投資も注目されています。蓄電池事業では、土地、蓄電池設備、受変電設備、系統連系設備などに多額の投資が必要です。本制度の対象となるかは個別の投資計画や設備の内容によって異なりますが、要件を満たすプロジェクトでは、投資を後押しする材料となる可能性があります。
ただし、本制度が直ちに土地や施設の売却価格を上昇させるわけではありません。需要や価格への影響については、制度の利用状況や個別市場の需給を継続して確認する必要があります。
なお、土地そのものは本制度の対象資産には含まれていませんが、大型施設の開発が進むことで、事業用地に対する需要へ間接的に影響する可能性があります。
今回の税制は企業向けですが、投資家にとっても市場の変化を読み解く材料になります。
今後は、次のような視点が重要です。
税制があるだけで企業や関連市場の収益が確約されるわけではありません。
一方で、大型投資の採算性やキャッシュフローを改善し、企業の投資判断を後押しする制度であることから、今後どの分野で具体的なプロジェクトが動き出すのかは注目したいポイントです。
制度を利用するためには、設備投資計画について事前に確認を受ける必要があります。
大まかな流れは次のとおりです。
1.特定生産性向上設備等投資計画を作成する
2.全国の経済産業局など(9局)へ確認を申請する
3.経済産業大臣の確認書を受領する
4.確認を受けた日から5年以内に設備投資を行い、事業の用に供する
5.要件を満たす場合、即時償却または税額控除の適用を受ける
確認申請の受付期間は、2026年7月31日から2029年3月31日までです。
制度の利用を検討する企業は、対象設備を取得する前に、最新の要件や申請手続きを確認する必要があります。
大胆な投資促進税制は、日本国内における大規模で高付加価値な設備投資を後押しする制度です。投資規模は原則35億円以上かつ投資利益率15%以上であることなど、一定の要件を満たす場合には、建物を含む即時償却または税額控除を選択できます。
企業にとっては、投資初期の税負担を抑えやすくなり、手元資金を確保しやすくなることが、大型投資を検討するうえで重要な材料となります。
さらに、設備投資が実行されれば、建設、不動産、設備、エネルギーなど、関連する幅広い産業にも新たな需要が生まれる可能性があります。
「どの企業がこの制度を活用し、どの分野で大型プロジェクトが動き出すのか」。今後の企業動向や不動産・エネルギー市場を考えるうえで、注目しておきたい制度といえるでしょう。
※本記事は制度および関連する市場動向について一般的な情報を提供するものであり、特定の金融商品への投資を推奨または勧誘するものではありません。また、税務・投資に関する助言を目的とするものではありません。制度の適用要件や税務上の取り扱いについては、経済産業省や国税庁の最新情報をご確認のうえ、税理士などの専門家へご相談ください。
参考資料
・経済産業省「経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案の概要」
・経済産業省「経済産業省の取組について」
・国税庁「1 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設」
・財務省「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」
Supervisor
監修者
岩城弘明税理士事務所 岩城 弘明
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