アート&カルチャー

2024.07.11

「平凡な日常の中から幸せを生み出していくことが僕の強さ」HOKIインタビュー(後編)

東京・六本木のヤマワケアートギャラリーでは、2024年7月11日〜23日の期間で、気鋭の若手作家・HOKIによる個展「名前をつけたくなる日々」を開催いたします。

デビューからわずか2年足らずで国内外の多くの展示会に参加し、すでに高い評価を得ているHOKIの新作を中心とした25点が一堂に展示されます。

今回は当個展開催にあわせてHOKIにインタビューし、これまでの活動や今後の展望についてお話いただきました。

〈聞き手・文=住友優太〉

平凡な日常の中から “強さ” を切り取って描き起こすことで「平らな日常は凸凹になっていく」

――HOKIさんはツノダの日常を描いた作品を発表されていますが、どこからインスピレーションを得て制作しているんですか?

 

インスピレーションは本当に自分の日常に転がっている出来事でしかないですね。未来がこうだったらいいなっていう希望や、過去に体験した出来事を基にするのではなく、現在の僕の日常の中からテーマとなるものを切り取って制作しています。スクラップ作業をする時も、駅前にいる鳩や野良猫を被写体にしたような平凡な写真が多いです。 

 

――「強さ」を一貫したテーマとする中で、日常の出来事を題材にするのはどうしてですか? 

 

例えば、駅前で地面に転がっている汚いものをついばんでいる鳩をじっと見てみると、いいものは食べてないし、街行く人から通行の邪魔だと嫌われていても、そこには一生懸命に生きようとする「強さ」がありますよね。こういった日常の中にありふれているのに、多くの人が何も感じずに見逃している出来事を僕は切り取って、その中にある「強さ」をキャンバスに描き起こしたいんです。そうすることで「平らな日常は凸凹になっていくよ」って表現したい。ずっとそう思って描いてますね。 

――なるほど、今回の個展のタイトル「名前をつけたくなる日々」にもつながっていそうですね。 

 

そうですね。これまではツノダというキャラクターの自己紹介のようなタイトルでやってたんですけど、この次は僕が考えているコンセプトをタイトルにしたいって思ってたんです。そう考えたときに、鳩やネズミやカラスあるいは草花といった、日常の中に存在はするけど見過ごされている小さな生き物たちの「強さ」を拾いあげて、一つの作品としてキャンバスに描き起こすというのは“彼ら”の存在に意味を持たせる行為であり、それを「名前をつける」って表現したんです。つまり、何気なく過ぎていく一日やその中で出会った生き物たちを描くことによって、それらは確かな意味を持った存在として「名前を持ち、その命を全うできる」。そういう想いを込めて「名前をつけたくなる日々」というタイトルにしました。 

 

ポップアートに油彩特有の「オールド感」を融合 調整を重ねてタブーとされるアウトラインを実現

――作品を制作するにあたってのルーティンなどはありますか?

 

作家あるあるかも知れないですけど、一日24時間っていう概念がなくて、描けるところまで描き、眠くなったら寝る生活です。なので一日30時間の日があれば、20時間で終わる日もありますね。

 

――独特のくすんだ色使いが作品の世界観を際立たせていますが、技法やこだわりについて教えてください。

 

現代アートを初めて知って、ポップアートを描こうと思った時からずっとアクリル絵具で描いてたんですけど、 今年に入って油絵具に変えたんです。イラスト画のようにきれいに描くのがポップアートの王道ではあるんですけど、「デジタル画だね」っていわれるのが嫌なのと、どこかオールドな雰囲気を表現したかったので、油絵具特有のオイル的なくすみやぼかしを取り入れたんです。オイルペインティングだとアクリルと違って絵具が伸びないのでアウトラインを描くのはタブーらしいんですけど、 僕はオイルや発色を調整してこれまで通りに実現させています。自分でもアウトラインはきれいに描けているなぁと思ったりしますね。

あとはグラデーションにもオールドなタッチを生み出したいので、くすんだイエローを足しています。アクリルだったら単調なんでウォームグレーかグレーショップを使ってたんですけど、オイルペインティングにした今は深い黄褐色を使ってますね。 

――制作にあたって特に意識していることはなんですか? 

 

キャラクターやオブジェクトが単純な分、配置構図とキャラクターの頭身にはすごく気をつけてますね。 顔の角度が少しでも変わると、目の形なんかもどんどん変わっていって、それがちょっとでも変になるとキャラクター全体が崩壊してしまうんです。 

あとは、これからはもっと「崩していきたい」って思ってます。例えば、花をそのまま花としてシンプルに描くのではなく、そこに僕が見出した「強さ」を加えて「自分が見た花はこれだ」「こう感じたからこの花はこうだ」というふうに描いていきたいですね。

 

観る人の人生を少しでも変えていくのがアーティストであり、それをできるか否かがアーティストとしての強さ

――経歴を拝見しますと、上京して初めて展示を行った2023年から国内外のグループ展や個展に数多く参加されていて非常に順調に見受けられます。上京してからこれまでの活動を振り返ってみていかがですか?

 

上京してからはとにかく沢山のアーティストの方にお会いして、それまでは本やネットの情報でしか知らなかった現代アートの世界に対する解像度が高くなりましたね。中でも、上京直後に松山智一さんとお話しする機会があったんですけど、そこで松山さんに言われた「のまれないでね」という言葉が強く印象に残っています。

上京してまる1年経った時に、東京で初めて作品を発表して、そこからまた半年後ぐらいに韓国のアートフェアにも参加したんですけど、やっぱり作品を出展するたびに課題が浮き彫りになったり、新たに取り入れようと思うことは出てきます。展示会のたびにほとんどの作品が売り切れるので、次の展示の締め切りに合わせてひたすらキャンバスに向かう日々ですが、常にそういった新たな課題とも向き合いながら、妥協することなく制作しています。

 

――今回の個展を通して伝えたい想いや注目点を教えてください。 

 

そうですね。まずはキャラクターの認知をどんどん上げていきたいと思っているので、今回六本木駅から歩いてすぐの大きなビルの中にあるヤマワケアートギャラリーさんで展示させていただけるのは大変ありがたいと思っています。

平凡で派手でもない絵ですけど、作品に込めた意味が伝わった時に「今日も一日頑張ろう」とか、その人の人生が山あり谷あり花があるような人生になってくれれば嬉しいですね。観る人の人生を少しでも変えていくのがアーティストの仕事だと思いますし、それをできるか否かっていうのがアーティストの強さにつながってくるとも思います。 

あとは、キャラクターとしてどんどん確立していくツノダの表情や動きは前回の個展と比べて結構変わっているので、そこも注目していただけたら嬉しいですね。 

――最後に、今後の展望について聞かせてください。 

 

ツノダがもっと認知されるようになったら、アニメーションとして動かしたいですね。例えば、ミュージシャンが作った曲にあわせてツノダの日常を描いたり。他にもフィギュア化やファッション関係のコラボとか、本当にきりがないんですけど(笑)。

ただそれとは別に、1人のアーティストとしてゲリラ的になにかを開催できるまでにいきたいという野望もあります。絵を描いてギャラリーの方が商売をしてくれるっていうのは、マニュアル化ではないですけど、他の人もやっていることなので。そういうのではなく、 自分の人生に刻み込まれるような“大きななにか”を成し遂げたいっていう気持ちがあります。

 

HOKI

【経歴】

2017〜活動開始(19歳)

2023.1 Hello Gallery Tokyo グループショー 東京

2023.5 ART BUSAN 2023 韓国

2023.6 ロイドワークスギャラリー 『One FACE 2023』 東京

2023.7 Hello Gallery Tokyo 個展 東京

2023.8+ART GALLERY グループショー 東京

2023.9 ART SHENZHEN 2023 中国

2024.3 GINZA SIX in Art glorieux グループショー 東京

2024.5 ART GALLERY UMEDA グループショー 大阪

 

Instagramはこちら

Yamawake Art Gallery

ヤマワケアートギャラリー代表

大石 主歩

Yukiho Oishi

大手百貨店から誘致を受けるレベルの20代〜30代の若手現代アーティストのマネジメントを主軸に、店舗内装業、飲食業、コンサルティング業等、幅広く事業展開をしている。 ヤマワケアート株式会社以外に、リブラ株式会社(13期目)の代表、株式会社JIS NATION(9期目)の副代表を務めている。

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