用語解説

2023.11.10

不動産クラウドファンディングとは?わかりやすく解説


資産運用を検討している方のなかには「少額から不動産に投資をしたい」と考えている方も多いでしょう。そのような場合は、不動産クラウドファンディングがおすすめです。

 

この記事では、不動産クラウドファンディングの仕組み、メリット・デメリット、向いている方や将来性などを解説します。不動産クラウドファンディングについて詳しく知りたい方は、是非参考にしてください。


不動産クラウドファンディングの将来性と社会貢献性

国土交通省が毎年公表している『不動産証券化の実態調査』によると、過去8年の市場規模は以下のように推移しています。

出典:国土交通省『不動産証券化の実態調査』

 

2015年が29.9兆円に対し、2022年は53.3兆円と8年で約78%も市場規模が拡大しています。年々市場は成長を続けており、特に2021年から2022年は規模の拡大が顕著です。

 

また、昨今ではSDGsが注目されています。SDGsとは、私たちが地球で暮らし続けられる「持続可能な世界」を実現するために、2030年までに達成すべき具体的な開発目標として、2015年の国連のサミットで採択されたものです。

 

不動産クラウドファンディングでは、居住用不動産や会社が使用するビルのほかに保育園や学校・教育施設、再生可能エネルギー施設など多種多様な施設を対象とすることができます。SDGsの「目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「目標11.住み続けられるまちづくりを」の実現にも、役立つものとなっているのです。

 

このように、今後不動産クラウドファンディングは環境問題の解決暮らしやすい社会実現に貢献可能な取り組みとして、今後ますます注目されるでしょう。


クラウドファンディングの基礎知識

クラウドファンディングは、インターネットを活用して少額の資金を多くの人々から集め、特定のプロジェクトやビジネス、イベントなどに活用する資金調達手法です。

 

一般の人々が独自のアイデアやビジョンに共感を示し、その実現に資金的な支援をすることで、多様なプロジェクトが生まれやすい環境を作り出しています。

 

クラウドファンディングには、主に以下のような種類があります。

 

・購入型クラウドファンディング

購入型クラウドファンディングは、プロジェクトや商品、イベントなどに対して、支援者から資金を募るものです。支援者は、リターンとして商品やサービスを受け取ります。

 

・寄付型クラウドファンディング

インターネット上などで公開されている個人・企業のプロジェクトに、支援者が寄付として資金提供するのが寄付型クラウドファンディングです。基本的に寄付というスタンスですからリターンはありませんが、お礼状などを受け取ることもあるようです。

 

・融資型クラウドファンディング

融資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングサービスの運営会社が投資家から小口資金を集めて大口化し、資金が必要な企業に融資を行うものとなります。支援者は、融資の利息分をリターンとして受け取ります。

 

・投資型クラウドファンディング

投資型クラウドファンディングは、企業やプロジェクト単位で不特定多数の個人から小口で資金調達を行います。支援者は、リターンとして事業の収益を受け取ります。

 

・ファンド型クラウドファンディング

ファンド型クラウドファンディングは、ある特定の事業者に直接投資を行います。リターンは、事業業績により変動します。

 

不動産(型)クラウドファンディング

今回解説する不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法(*1)に基づく電子取引の許認可を受けた事業者(クラウドファンディング業者)がオンラインを通じて投資家を勧誘し出資を募り、その出資金を元に不動産を賃貸・売買し、得られた利益(賃料・売却代金)を分配する投資手法です。

 

従来の不動産投資に比べて、少額から参加できる点や、投資家が複数のプロジェクトに分散投資することができる点などが魅力です。

(*1)不動産特定共同事業法
出資を募って不動産を売買・賃貸等し、その収益を分配する事業を行う事業者について、許可等の制度を実施し、業務の適正な運営の確保と投資家の 利益の保護を図ることを目的として、平成6年に制定(引用:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)法の概要」より)

 

運用は専門家にお任せ!不動産クラウドファンディングのメリット

 

資産運用の手段として不動産クラウドファンディングを選択するメリットには、以下の3つが挙げられます。

少額から資産運用を始められる

案件によっては高い利回りでの資産運用が期待できる(*2)

運用の手間と時間を省ける

 

(*2)対象不動産の状況や市況により、配当を得られず、元本を毀損する場合もあります

 

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。


・少額から資産運用を始められる

通常、不動産投資を始める場合は、投資用不動産を購入する必要があります。投資用不動産は数千万円以上するため、投資のハードルが高く、始めにくい点がデメリットでしょう。

 

不動産クラウドファンディングでは、仮に事業者が5千万円の投資用不動産の募集を募り、権利を1,000分の1に小口化した場合は5万円から投資することが可能です。

 

少額から不動産投資に取り組める点がメリットとなります。


・高い利回りでの資産運用が期待できる

不動産クラウドファンディングの想定利回りは3~8%程度のものや、10%を超える案件もあります。

他の投資の場合はどうかというと、日々の価格変動が大きい株式を投資対象としている株式投資では5%以上の利回りが得られる場合もあるかもしれません。

 

しかし、投資判断が難しく、判断を誤ると資産を大きく減らす可能性もあります。リスクを抑えられる個人向け国債への投資を選択するのも1つの方法ですが、元本は保証されるものの、最低金利保証0.05%(年率)と低めの水準です。

 

それに対して、不動産クラウドファンディングは運用する物件によって利回りは異なりますが、株式投資と同程度の利回りが期待できます。

 

・運用の手間と時間を省ける

不動産投資を始める際は、多数ある不動産から運用する不動産を厳選しなくてはなりません。また、入退去の管理、建物の管理、トラブル対応といったように、契約前だけでなく契約後も管理に手間と時間がかかります。

 

不動産クラウドファンディングでは、基本的には不動産の選別と管理は事業者が行ってくれるため、そのような業務を任せることができる案件を選ぶことで、投資家は手間と時間を省くことが可能です。

 

また、通常の不動産投資では、物件価格が高額なので基本的には複数の不動産を運用できません。しかし、不動産クラウドファンディングは小口化することで最低投資額が少額になるため、複数の不動産や他の金融商品と組み合わせる分散投資によって運用のリスクも軽減できるでしょう。

 

不動産クラウドファンディングのデメリット

不動産クラウドファンディングを選択するデメリットとして、以下の3つが挙げられます。

 

元本が保証されていない

原則中途解約できない

金融機関の融資を利用できない

 

それぞれのデメリットについて詳しく説明していきます。

 

・元本が保証されていない

預金や個人向け国債などは元本が保証されているため、投資金額を下回ることはありません。これに対して、不動産クラウドファンディングは元本が保証されていないため、最終的な運用結果が投資金額を下回る可能性があるので注意が必要です。

 

・原則中途解約できない

一般的な不動産投資の場合、自分で運用期間を設定します。安定した家賃収入を得ている間は手放さずに運用する方もいれば、価格上昇とともに手放して売却益を得る方もいるでしょう。

 

しかし、不動産クラウドファンディングの場合には、運用期間があらかじめ決まっているのが一般的です。例えば、5年後に償却する事業プランの場合、5年間は利息を受け取り、5年後に売却価格に応じた分配金を受け取るという流れです。そのため、この事業プランの場合には、5年間は元本を回収できません。

 

急に現金が必要になった場合に、すぐに現金化できない点はデメリットといえるでしょう。


・金融機関の融資を利用できない

不動産投資は不動産に担保価値があることから、金融機関のなかには不動産投資に対するローンを提供しているところも多いです。

 

しかし、不動産投資ローンが融資の対象としているのは、現物不動産への投資に対してです。不動産クラウドファンディングのような形式では融資を受けられません。

 

現物不動産投資では、金融機関の融資を利用して資金を増やすことで、資産を大きく増やせる可能性があります。しかし、不動産クラウドファンディングで運用するのは自己資金のみで、大きく資産を増やせない点がデメリットといえるでしょう。


「不動産クラウドファンディング」はどんな人に向いている?

以下の条件に該当する方は、不動産クラウドファンディングに向いています。

 

不動産投資を少額から始めたい
運用する手間と時間を省きたい
投資対象の不動産を自分で精査したい

 

それぞれの条件について詳しく解説していきます。

 

・不動産投資を少額から始めたい

不動産投資は株式と比較すれば価値が安定している現物資産への投資で、安定した家賃収入が期待できるなどの理由から人気が高いです。

 

通常の不動産投資は、始めるのに基本的には数千万円以上の資金が必要となりますから、不動産投資ローンが利用できるとしてもハードルは高いものとなります。

 

しかし、不動産クラウドファンディングの場合、事業者によって最低投資金額は違いますが、1万円程度から不動産投資を始めることが可能です。少額から不動産投資を始めたいと考えている方には、向いているでしょう。

 

・運用する手間と時間を省きたい

不動産クラウドファンディングの場合、投資する不動産が事前に決まっている、管理や運用は事業者が行ってくれるので運用する手間と時間を省けます。

 

通常の不動産投資でも管理や運用は不動産会社に任せることができますが、最初の物件選定や最終的な投資判断(購入や売却など)は自分で行う必要があるため、時間的にも知識的にも難しさがあります。


・投資対象の不動産を自分で精査したい

不動産クラウドファンディングでは、投資する不動産の情報が広く公開されており、自分で投資するかどうかを判断できます。運用する不動産や運用状況が明確なので、実際の不動産投資とほぼ同じといえます。

 

不動産クラウドファンディングは、不動産への投資を少額から楽しみたいと考えている方に向いているでしょう。

Writer&Supervisor

執筆&監修者

矢野翔一

Shoichi Yano

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。 不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

スマホで完結できる不動産クラウドファンディング「ヤマワケエステート」

HPはこちら 会員登録

本コンテンツは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものです。投資家は投資商品ごとのリスクを十分理解したうえで、投資について調査・検討し、自らの責任の下で投資を行うようお願いします(「ヤマワケ」のうち2023年12月現在でサービスの運営を開始してるプラットフォームは「ヤマワケエステート」のみであり、本コンテンツ中のその余のサービスに関する記載はいずれも暫定的なものにとどまります)。掲載されている情報を基に損害を被った場合でも、運営会社及び情報発信元は一切の責任を負いません。本コンテンツに掲載される情報は、弊社が信頼できると判断した情報源を元に作成していますが、その情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツに関するご質問や参照のお問い合わせは受け付けておりません。なお、本コンテンツの記載内容は予告なしに変更することがあります。

Tag

タグ検索

Pick up

特集記事

用語解説

2024.06.18

投資の自己責任原則とは?金融リテラシーの必要性もあわせて解説

企業・サービス

2024.06.11

世界屈指の独立系不動産コンサルである英Knight Frankグループ会社、「Knight Frank Korea」とは?

マネー&ビジネス

2024.06.04

マネー&ビジネス

【今年の夏休みはどこに行く?】休暇に行きたい旅行先トップは北海道、沖縄、東京に!
Read more

What's new

新着記事

用語解説

2024.06.18

投資の自己責任原則とは?金融リテラシーの必要性もあわせて解説

企業・サービス

2024.06.11

世界屈指の独立系不動産コンサルである英Knight Frankグループ会社、「Knight Frank Korea」とは?

マネー&ビジネス

2024.06.04

マネー&ビジネス

【今年の夏休みはどこに行く?】休暇に行きたい旅行先トップは北海道、沖縄、東京に!
Read more

Ranking

ランキング

マネー&ビジネス

2024.04.15

マネー&ビジネス

投資の勉強にオススメの本10選をご紹介!知識をつけて将来に備えよう

マネー&ビジネス

2024.02.29

マネー&ビジネス

【年収と結婚に関する意識調査】女性が男性の結婚相手に求める理想年収は500万以上、男性が女性に求める理想年収は300万以上

用語解説

2024.02.22

用語解説

第二種金融商品取引業とは? その仕組みと第一種金融商品取引業との違いを解説

Ranking

ランキング

マネー&ビジネス

2024.04.15

マネー&ビジネス

投資の勉強にオススメの本10選をご紹介!知識をつけて将来に備えよう

マネー&ビジネス

2024.02.29

マネー&ビジネス

【年収と結婚に関する意識調査】女性が男性の結婚相手に求める理想年収は500万以上、男性が女性に求める理想年収は300万以上

用語解説

2024.02.22

用語解説

第二種金融商品取引業とは? その仕組みと第一種金融商品取引業との違いを解説

人・物・事(ビジネス)の証券化を目指す投資・配当型クラウドファンディング「ヤマワケ」のニュースや 投資初心者からプロまで多くの方に役に立つ金融・不動産の知識や情報を紹介するオンライン記事を提供します。

read more