用語解説

2024.07.27

土地の価値とは?4つの価格種類、7つの決定要因を徹底解説

不動産投資に興味があったり、マイホーム購入を検討する際など、大人になってから不動産について学ばれる方も多いのではないでしょうか。一見難しそうではありますが、不動産に関する様々な知識を学べば学ぶほど興味がわき、好きになる方も少なくありません。

 

不動産投資の収益源は、物件を売却した際に得られる利益(キャピタルゲイン)と、入居者の家賃収入で得られる利益(インカムゲイン)に分けられます。株式と同じように価格が変動し、証券取引所を通じて売買できるREIT(不動産投資信託)に投資するといった方法もあります。

 

マイホームを含め不動産の将来的な値上がりに期待し売却益を目指すのであれば、土地や建物の資産価値を正しく理解し、価格動向の予測と物件の目利き力が問われます。

 

今回の記事では、一物四価(いちぶつよんか)と言われる土地の価格と、その価格を決める主要要因について解説します。記事の最後には価格相場を調べるのに便利なサイトと活用方法もご紹介します。

土地の価格は4種類

 

土地の価格には、次の4種類があります。

 

  • ・公示地価
  • ・路線価&相続税評価額
  • ・固定資産税評価額
  • ・実勢価格(時価)

 

同じ土地でも4種類の価格があることから、土地の価格は一物四価と言われます。上記のほかにも基準地価を加えて、一物五価と呼ばれることもあります。それぞれの価格について見ていきましょう。

  1. 公示地価

公示地価は国が調べた土地の価値です。土地の価格はその土地ごとの特性や、売主と買主の合意によって決まりますが、市場原理に任せるだけではバブルのころのように乱高下してしまうかもしれません。そこで取引の指標になるような価格を公表したものが、公示地価です。

 

公示地価は国土交通省の土地鑑定委員会が、毎年1月1日時点における「標準地」の1㎡あたりの価格を3月に発表しています。公示地価は全国の地点で発表され、令和5年地価公示(*1)では26,000地点で実施されました。

 

また公示地価を補完する指標として、基準地価があります。基準地価は毎年7月1日時点の「基準地」価格を、都道府県が発表するもので土地取引の目安になります。土地の価格は基準地価も含めて、一物五価と呼ばれることもあります。

 

(*1)地価公示は、国が地価を公表すること、公示地価は地価公示によって国から公表された土地価格をあらわします。

  1. 路線価&相続税評価額

路線価とは国税庁が定めた土地価格で、1㎡あたりの価格を表しています。路線価は相続税評価額に使われるために、1955年に制定されました。おおむね公示地価の8割程度と言われており、相続税や贈与税を計算する際の不動産評価額として使われます。

  1. 固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された土地・家屋の評価額のことです。昭和25年の地方税制度の根本的改革に伴い創設されました。おおむね公示地価の7割程度で、3年ごとに見直されます。

 

固定資産税とは土地や建物を保有していると課税される税金で、毎年4月から6月ごろに所有者に対して納税通知書が送られてきます。固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書に添付されている「課税明細書」に記載されており、公示地価や路線価と違ってネットなどで公表されていません

  1. 実勢価格(時価)

実勢価格は時価とも言われ、実際に不動産が取引された価格です。土地などの不動産には決められた価格はなく、物件ごとの特徴などを考慮しながら売主と買主の合意によって価格は決まります。

 

価格を決める際に参考にされるのが実勢価格で、過去の取引事例をもとに価格が決まります。過去の取引事例の調べ方は後ほど紹介します。

 

土地の価値は7つの要因で決まる

土地の価格は4種類あり、それぞれ土地の価格を決める際には、下記の7つの要因を加味しながら算定しています。

1.法令上の制限

土地には土地の利用制限を定めた都市計画法など法令上の制限があり、好きな建物が建てられるわけではありません。低層の戸建てが中心のエリアや、商業施設が立ち並ぶエリアなど、細かく指定されています。大きな建物が建てられるエリアは土地価格が高くなり、建物が建てられないエリアは安くなる傾向にあります。

2.取引件数の数

売買の取引件数の数も土地価格の要因の1つです。周辺で取引件数が多い土地は、需要の高いエリアとみなされ、取引価格も上昇傾向です。逆に取引件数がほとんどない場合は、需要は低く価格上昇しにくい傾向にあります。

3.周辺環境や利便性

土地の周辺環境も、土地価格を決める大きな要因です。とくに重要と言えるのが、駅からの距離です。都市部の土地ほど駅からの距離は重要で、近ければ近いほど利便性がよく価格も高くなるでしょう。

 

逆に価格が安くなりやすいのは、嫌悪施設と言われる建物が周辺にある場合です。火葬場や産業廃棄物処理場、臭いの強い工場などがあると、取引需要が少なく土地価格も下がる傾向が見られます。

4.土地の面積

土地の面積も価格を決める要因の1つですが、広ければ高いというわけではありません。戸建てが立ち並ぶ住宅街では戸建てを建てるのにちょうどよい面積の需要が高く、広すぎると評価が下がってしまう場合もあります。一方でマンションや商業施設を建築できるエリアでは、広い土地は希少性が高いと言えるでしょう。

5.土地の形状

土地の形状は、土地価格を決めるにあたって大きな要因の1つです。戸建てを建てる場合でも商業施設を建てる場合でも、正方形や長方形の整形地の方が建てやすいため評価が高くなります。一方で旗竿地と呼ばれると呼ばれるような奥まった場所にある土地は、需要が低く価値は高くありません。

6.土壌汚染や地下埋設物

土壌汚染があったり、地下に埋設物があったりすると、土地の評価は下がります。土壌汚染がある土地は土壌を改良する必要があるため、資産価値としては高くありません。同じように埋設物があれば、取り除く必要があるため価格は安くなります。

7.方角と日当たり

方角と日当たりも、価格に影響を与える要因です。とくに住宅地では影響が大きく、同じマンションや分譲地の中でも、北向きと南向きでは価格差が大きくなります。他の条件にもよりますが、一般的には南向きの土地は日当たりもよいことから一番高く、続いて東向き→西向き→北向きの順に安くなります。

土地の価格相場の調べ方

 

ここまでは土地の価格について紹介してきましたが、ここからは価格相場の調べ方を紹介します。土地の価格を調べる方法は、次の5つです。

 

  • 不動産情報ライブラリ(国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索)
  • 路線価図
  • ・固定資産税評価額
  • ・不動産情報ライブラリ(取引価格・成約価格情報)
  • ・不動産一括査定サイト

 

それぞれの調べ方を、紹介していきます。

 

不動産情報ライブラリ(国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索)

 

国土交通省が運営している不動産情報ライブラリでは、公示地価や基準地価を調べられます。まずは、下記URLへ入りましょう。

 

国土交通省「不動産情報ライブラリ(国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索)」

https://www.reinfolib.mlit.go.jp/landPrices/

 

下記の画面から、「地域選択」を選びます。

出典:国土交通省不動産情報ライブラリ

 

次に、表示された検索BOXから、調べたい都道府県を選びましょう。

出典:国土交通省不動産情報ライブラリ

 

場所を選択するだけでなく、地価公示、地価調査(基準地価)、もしくは両方検索するかを選べます。その他の条件も絞りたい場合は選択して、右下にある一覧表示のボタンを押すと、下記のような検索結果画面が表示されます。

 

「価格」の列にて公示地価を確認することができます。

 

出典:国土交通省不動産情報ライブラリ

 

路線価図

続いて路線価図を検索する方法を見ていきましょう。路線価図は下記のURLから調べられます。

国税庁「財産評価基準」

https://www.rosenka.nta.go.jp/

 

クリックすると、下記のような画面になります。調べたい都道府県をクリックします。

 

出典:国税庁「財産評価基準」

 

すると次のような画面になります。路線価を調べるには路線価図をクリックします。

 

出典:国税庁「財産評価基準」

 

次の画面では、市区町村を選択します。

出典:国税庁「財産評価基準」

 

市区町村の次は、町名を選ぶ画面になります。検索したいエリアの町名の横にある数字をクリックして選びましょう。

 

出典:国税庁「財産評価基準」

 

町名によってはこのように複数の数字が表示されます。ここでは選びたいエリアがどこに該当するかわわからないため、どれでもよいのでクリックしてみましょう。すると、次のような画面になります。

 

出典:国税庁「財産評価基準」

 

調べたいエリアの前面道路に記載してある数字が、路線価です。路線価は1㎡あたりの価格を、千円単位で表したものです。上記の例では路線価は、820,000円になります。

 

出典:国税庁「財産評価基準」

 

もし調べたいエリアが地図上にない場合は、左側にある接続図を使って、調べたいエリアを探しましょう。

 

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書と一緒に送付される課税明細書に記載されています。市町村によって課税明細書の書式は違いますが、おおむね下記のような記載方法になります。

出典:大阪市

 

もし課税明細書が手元にない場合は、固定資産課税台帳もしくは固定資産評価証明書で確認できます。固定資産課税台帳は書類での取り寄せはできず、役所での閲覧のみ可能です。固定資産税評価証明書は、不動産が所在する市区町村(東京23区内は東京都)役場の窓口で取得できます。

不動産情報ライブラリ(取引価格・成約価格情報)

 

国土交通省が運営している不動産情報ライブラリでは、実際に取引が行なわれた事例から不動産取引価格情報・成約価格情報を調べられます。まずは、以下のURLから入りましょう。

 

国土交通省「不動産情報ライブラリ(取引価格・成約価格情報の検索・ダウンロード)」

https://www.reinfolib.mlit.go.jp/realEstatePrices/

 

出典:国土交通省不動産情報ライブラリ

 

地域や価格情報区分、種類、時期などの情報を入力し、「一覧表示」をクリックします。

 

出典:国土交通省不動産情報ライブラリ

 

検索結果一覧では、取引総額や駅距離、面積、㎡単価、土地形状などが表示されます。なお、所在地は町名までしか表示されず、場所を特定して取引事例を確認することはできません。近隣の取引事例から、実際の土地の取引価格・成約価格を確認したい時に活用しましょう。

不動産一括査定サイト

土地の相場を調べる方法としては、不動産一括査定サイトを利用する方法もあります。一括査定サイトでは複数の不動産会社が査定価格を算出してくれますので、おおまかな相場を気軽に調べられます。検索サイトの検索BOXにて「不動産一括査定サイト」と入力して検索すると様々なサイトが表示されます。

 

相場を調べた後、売買をするのであれば、そのまま不動産会社に相談もできるため、スムーズでしょう。売買に慣れていない初心者の方にもおすすめの方法です。

まとめ

 

土地は一物四価と言われ、同じ土地でも4種類の価格が存在します。これから土地の売買を考えている方は、それぞれの価格の種類を理解して相場を正しく知る必要があります。また価格が決められる主な要因についても知ることで、よりその土地の価値について理解を深めることができます。

 

しかし、土地の相場感を調べるのは簡単ではないため、不安な場合は一括査定サイトを利用しましょう。簡単に相場がわかるだけでなく、不動産会社が親身になって相談にのってくれるため、初心者の方にもおすすめの方法です。

Supervisor

監修者

水野 崇

Mizuno Takashi

1972年、群馬県太田市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒業後、東京エレクトロン株式会社に営業職として就職。信念を貫き自らの人生を切り開いていくことを決意し、2003年、30歳で早期退職。個人投資家(株式専業トレーダー)に転身。これまでに年間最高売買代金350億円超、月間最高利益2414万円を達成。
法人経営に携わり複数事業のスタートアップに参画、スモールM&Aを経験。豊富な投資実績を評価され、証券会社等からセミナー講師・金融記事執筆・投資ファンド設立のビジネス提案を受ける。ライティング実績は10年以上あり、大手金融機関など月20本の執筆・監修案件を現在担当。
一人でも多くの方の金融リテラシー向上を支援したいと感じ、2018年12月にCFP資格の全6課目一括と宅地建物取引士資格を同時合格。独立系ファイナンシャルプランナーとしてライフプラン、資産運用、不動産、相続・資産承継など、年間100名以上の個別相談に対応。
日本FP協会「2021年FP広報センター」スタッフ業務に携わり、全国1000名を超える方から寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。大学や事業法人で講師を務め年80回登壇。学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義(2023年度は180コマ)を毎週行っている。

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