不動産&金融
2026.02.20
ペアローンとは、1つの物件の購入に対して、夫婦や親子などがそれぞれ「主たる債務者」として住宅ローンを契約する方法です。つまり、夫と妻がそれぞれ銀行と契約を結ぶため、住宅ローン契約は合計で2本となります。
この仕組みの大きな特徴は、お互いが相手のローンの「連帯保証人」になる点です。物件の所有権は、それぞれが出資した資金(頭金+借入金)の割合に応じた「共有名義」となります。例えば、夫が3,000万円、妻が2,000万円を負担して5,000万円の物件を購入する場合、持ち分は夫が5分の3、妻が5分の2となるのが一般的です。
ペアローンとよく比較されるのが「収入合算」です。収入合算は、あくまで契約は「1本」であり、主債務者の収入にパートナーの収入を上乗せして審査を通す方法です。収入合算には主に以下の2種類があります。
連帯保証型は、夫が主債務者、妻が連帯保証人となるパターンです。妻は団体信用生命保険(団信)に加入できず、住宅ローン控除も受けられません。連帯債務型は、夫婦ともに債務者となりますが、契約は1本です。フラット35などで利用され、夫婦ともに住宅ローン控除を受けられる場合がありますが、民間の金融機関では取り扱いが少ないのが現状です。
一方、ペアローンは契約が2本独立しているため、夫婦それぞれが団信に加入でき、かつ住宅ローン控除も二人とも利用できる点が、収入合算(特に連帯保証型)との決定的な違いです。
ペアローンの利用者は年々増加傾向にあります。特に2020年から2024年にかけて利用率は約1.6倍に伸びており、現在では住宅ローン利用者の約3割がペアローンを選択しているというデータもあります。
この背景には、都市部を中心としたマンション価格の高騰があります。一人の収入(単独ローン)では希望する物件の価格に手が届かないケースが増えており、共働き世帯がパワーカップルとして資金力を合わせるためにペアローンを選んでいるのです。特に20代・30代の若年層での利用率が高く、借入額の中央値で見ると、単独ローンよりもペアローンの方が1,000万円以上多く借り入れている傾向があります。
ペアローンの主なメリットについて解説します。
ペアローンの最大のメリットは、夫婦の年収を合算して審査されるため、単独ローンに比べて借入可能額を大幅に増やせることです。
ペアローンで借りられる金額は、各個人の年収と金融機関の審査基準(年収倍率や返済負担率など)をもとに決まりますが、夫婦や親子など複数人の年収を合算して審査されるため、単独ローンと比べてより高額な借り入れが可能になる点が特徴です。
ただし、借入額は各個人ごとの上限(例えば1人あたり8,000万円)や物件価格を超えない範囲で設定され、金融機関によっては1人あたり最低500万円以上といった条件が設けられている場合もあります。実際に借りられる金額はケースごとに異なるため、シミュレーションを利用したり、金融機関に直接相談したりして確認するのが確実です。
ペアローンを利用すると、夫婦それぞれが住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けることができます。住宅ローン控除は、年末時点のローン残高の一定割合が所得税等から控除される制度ですが、控除の対象となる借入額には上限が設けられています。
単独で住宅ローンを組んだ場合、借入額がこの上限を超えると、超過分については控除の対象外となります。一方、ペアローンで借入額を夫婦それぞれに分けることで、各自が控除上限の範囲内で制度を利用しやすくなります。その結果、世帯全体として住宅ローン控除の適用額を最大化でき、減税効果を高めることが可能になります。
契約が2本あるため、夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入します。万が一、夫が死亡または高度障害状態になった場合、夫名義のローン残高は保険金で完済されゼロになります。
収入合算(連帯保証型)の場合、連帯保証人である妻が亡くなってもローン残高は減りませんが、ペアローンであれば妻名義のローンが消滅します。お互いに保険を掛け合っている状態となり、万が一の際のリスク分散になります。
契約が別々であるため、それぞれのライフプランに合わせて金利タイプや返済期間を自由に設定できます。例えば、「夫は今後も安定収入が見込めるので、金利上昇リスクのない全期間固定金利を選ぶ」「妻は将来的に時短勤務の可能性があるため、金利の低い変動金利を選びつつ、借入額を抑える」といった柔軟な組み合わせが可能です。また、年齢差がある夫婦の場合、完済年齢に合わせてそれぞれの返済期間を調整することもできます。
ペアローンは2本の金銭消費貸借契約を結ぶことになるため、契約に関わる諸費用の一部が2倍かかります。具体的には、契約書に貼付する印紙税や、登記を行う司法書士への報酬などがそれぞれ発生します。ただし、融資事務手数料に関しては「借入額×2.2%」のように定率で決まる場合、総借入額が同じであれば単独ローンと総額は変わりません。最近では電子契約によって印紙代が不要になるケースもありますが、基本的には初期費用が割高になることを認識しておく必要があります。
非常に重要な注意点として、住宅の「持分割合」と「出資割合」を一致させなければならないという税務上のルールがあります。例えば、総額5,000万円の物件に対し、夫が3,000万円(60%)、妻が2,000万円(40%)のローンを組んだとします。この場合、登記上の持分も「夫6:妻4」にする必要があります。もしこれを「夫5:妻5」で登記してしまうと、夫から妻へ差額分の贈与があったとみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。頭金を含めた総出資額の比率で正しく登記することが不可欠です。
ペアローンは「二人の収入があること」を前提とした返済計画になりがちです。しかし、長い返済期間中には、出産・育児による休職、病気、転職、あるいは退職などにより、どちらか一方の収入が減る、あるいは途絶える可能性があります。もし妻の収入がゼロになった場合でも、妻名義のローンの返済義務はなくなりません。さらに、所得税が発生しなければ住宅ローン控除も受けられなくなります。片方の収入が減った場合、もう一方が二人分の返済を支えなければならず、家計が破綻するリスクが高まります。
メリットで触れた団信ですが、これはあくまで「亡くなった本人のローン」だけを消滅させるものです。例えば、夫が亡くなった場合、夫のローンはゼロになりますが、妻のローンはそのまま残ります。残された妻は、自分名義のローンの返済を続けながら、生活費や子供の教育費を一人で賄わなければなりません。収入合算(連帯債務型)の夫婦連生団信などとは異なり、ペアローンの標準的な団信では「相手のローン」まではカバーされない点が盲点となりやすいです。
ペアローン最大のリスクと言われるのが「離婚」です。離婚してもローンの返済義務や連帯保証人の立場は消えません。家を売却してローンを完済できれば良いのですが、売却額がローン残高を下回る「オーバーローン」の状態だと、差額を現金で用意しない限り売却自体ができません。
また、どちらか一方が住み続けるためにローンを一本化しようとしても、一人で二人分の残債を引き受けるには相応の年収が必要であり、金融機関の再審査に通らないケースがあります。結果として、離婚後も元配偶者と連絡を取り合いながらローンを払い続けるという複雑な状況に陥る可能性があります。
死亡時のリスク対策として有効なのが、民間の生命保険の活用です。相手のローン残高に相当する死亡保険金が出る保険に入っておけば、万が一の際にその保険金で残債を完済できます。
また、最近では一部の金融機関で、ペアローン向けの高度な団信(団信革命やクロスサポートなど)が登場しています。これらは、どちらか一方に死亡・高度障害など万が一のことがあった場合、二人分のローン残高がゼロになる、あるいは保障が手厚くなるといった特約が付加できるもので、リスクを大幅に軽減できます。
ペアローンは、理想のマイホームを手に入れるための強力なツールですが、それは夫婦が「二人三脚」で長期間にわたり責任を共有することを意味します。借入額が増やせることや住宅ローン控除といった「目先のメリット」だけでなく、収入減少や離婚、万が一の事態といった「将来のリスク」を直視することが不可欠です。
重要なのは、契約前に夫婦でしっかりと話し合うことです。「もし片方が働けなくなったらどうするか」「もし別々の道を歩むことになったら家はどうするか」。こうしたネガティブなシナリオも含めてシミュレーションし、民間保険や貯蓄で備えを固めておくことこそが、ペアローンを成功させる鍵となります。プロであるファイナンシャルプランナー(FP)などに相談し、客観的なライフプランを作成した上で、最終的な決断を下すことをおすすめします。
Writer&Supervisor
執筆&監修者
山下 耕太郎
Koutarou Yamashita
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