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2025.06.18

エネルギーの最適化を担うキープレイヤー「アグリゲーター」の役割と仕組み

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目次

アグリゲーターとは:電力需給を調整する司令塔

アグリゲーターは、もともと英語の「アグリゲート(aggregate:集約する)」からとられた言葉とされています。発電を行い電力を供給する「事業者」と電力を使用する「需要家(個人・法人)」の間にたち、電力の需要と供給のバランスをコントロールしたり、各需要家のエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備、需要設備)の効率化に取り組む事業者を指します。

 

アグリゲーターの役割

これまで長きにわたって電力は、大規模な発電所で発電され、送配電網を通じて需要家に対して供給されてきました。しかし、再エネの導入が進んだことにより、家庭や工場、企業など需要家側で、太陽光発電パネルやEV(電気自動車)などの多様な規模のエネルギーリソースが分散し、普及するようになりました。

再エネの増加により発電量の変動も大きくなります。電力会社の従来の取り組み方法のみで需給バランスを調整することが難しくなるなか、期待されているのが、需要家が需給バランスに取り組む方法の一つである「ディマンド・リスポンス(以下、DRとする)」です。

具体的には需要家が電気を使う量や時間を調整することで、電力需要のパターンを変化させることです。

その一例が夏の冷房の使用です。電力需要が集中する時間帯や、太陽光発電の発電量が少なくなり、需給が逼迫しやすいタイミング(14時~18時頃)に、需要家が電気の使用量を減らせることができれば、全体の需要量を緩和することができます。この需要量を抑えるDRを「下げDR)と呼びます。夏季に電力会社から発される「節電のお願い」なども下げDRの一種です。

しかしながら、DRが行われる際には、電力が必要とされるタイミングで需要家が使用量を調節しなければいけません。電力会社がもとめる調節を、電力に関してプロではない各需要家が対応し続けるのは簡単ではありません。また、一つ一つの需要家の規模は小さい場合もあり、大きな効果を発揮するためには多数の需要家を束ねることが必要です。

そこで、需要家を束ねて電力会社との間に立ち、調整役として必要となるのがアグリゲーターです。

 

アグリゲーターのビジネスモデル

アグリゲーターのビジネスモデルは多岐にわたります。まずアグリゲーションビジネスは、発電側のリソースを束ねる「再エネアグリゲーション」と需要側のリソースを束ねるDER(分散型電源)アグリゲーションの2種類に大別されます。

①再エネアグリゲーション

再生可能エネルギーによって発電された電力を束ねることが、再エネアグリゲーションです。脱炭素社会実現に向けて脚光をあびる再エネですが、天候や時間帯の影響により発電量が不安定になりやすいという一面も持ち合わせています。

再エネアグリゲーションでは、複数の再エネ発電者をとりまとめて1つのグループをつくります。そして、個々の再エネ電源による発電量の変動を、グループ内でならすことで安定させます。発電事業者にとっても、発電量が変動しやすい再エネ電気を安定価格で売却できたり、発電に必要な複雑な手続きを省くことができたりと、再エネアグリケーションを活用することで様々なメリットがあります。

 

 

 

②DERアグリゲーション

電力の需給バランスを需要家側のコントロールによって調整しようとするのが、DERアグリゲーションです。アグリゲーターは、自家発電機や蓄電池などを持つ電力ユーザーを束ねて需要の増減を調整することを目指します。

DERアグリゲーターは以下の2種類に分類されます。

①リソースアグリゲーター:電力ユーザーの分散型電源をまとめあげ、制御する事業者。電力ユーザーの分散型電源を集め、コントロールする司令塔のような役割を担う。

②アグリゲーションコーディネーター:リソースアグリゲーターに集まった電力をさらに束ねて、電気事業者と取引を行う事業者。

 

 

たとえば電力の需要に対し供給が追い付かなくなりそうな場合、送配電事業者はアグリゲーションコーディネーターに需要を抑制するよう指令を出します。それを受けたアグリゲーションコーディネーターはリソースアグリゲーターに、リソースアグリゲーターは電力ユーザーに需要抑制の指令を出します。

電力ユーザーが需要抑制を行うと、それらは需給バランスを調整する力(調整力)として送配電事業者に提供され、アグリゲーターと電力ユーザーは送配電事業者から報酬を得ることができます。

DERアグリゲーションはエネルギーの安定化に貢献するだけでなく、参加企業にとっては収益につながるため、新たなビジネス領域としての期待が高まっています。

小規模電源を束ねて市場参入を可能に

また、アグリゲーターにはもう一つの役割があります。それは、単体のDER容量では卸電力市場や需給調整市場への参加が難しい小規模電源等を所有する事業者等をとりまとめて、とりまとめた電力を小売電気事業者、一般送配電事業者等に供給するビジネス機会を創出することです。

単体のDER容量では個々の規模が小さく、各市場に参加するための要件(出力容量や応答性など)を満たすことが難しい場合があります。また、取引に必要な技術的・制度的な知識や運用体制を整えるコストも、小規模事業者にとっては大きな負担となります。そういった小規模事業者をアグリゲーターがとりまとめ、十分な出力容量を小売電気事業者等に供給することで、これまで個々で市場に参加することが難しかった小規模事業者にも、ビジネス機会が生まれます。

実際にこのビジネスモデルは拡大しており、今後の更なる拡大が期待されています。

 

 

まとめ:アグリゲーターが拓く新しいエネルギーの未来

これまで太陽光発電などの再生可能エネルギーは、発電量を増やすことに焦点があてられてきました。しかし、気候変動が進行する現代において、発電量の増加に加え電気の需給を最適化することが求められています。そこで重要性が増しているのが電力の需給調整役を担うアグリゲーターです。

アグリゲーターは、発電を行う事業者等と電力を必要とする需要家の間にたち、電力需給の調整を行う他、各需要家のエネルギーリソースの効率化に取り組みます。

また、単体のDER容量では卸電力市場や需給調整市場への参加が難しい小規模電源等を所有する事業者等をとりまとめ、その電力を小売電気事業者、一般送配電事業者等に供給するなど、新たなビジネス機会を創出する役割も担います。

再生可能エネルギー業界のキープレイヤーとして、アグリゲーターの重要性はますます増大しており、その動向は今後のエネルギー市場の発展を左右すると言えるでしょう。

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