マネー&ビジネス
2024.03.11
不動産クラウドファンディングに興味がある方の中には、プラットフォーム上のプロジェクトが上手くいくのか、業界の将来性などが気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産クラウドファンディングの仕組みや活用する社会的メリット、資産運用の成功事例や将来性などを、2023年7月に発表された国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」を参考に解説します。
クラウドファンディングとは、インターネットを活用して資金を多くの人々から集め、特定のプロジェクトやビジネス、イベントなどに活用する資金調達方法です。
クラウドファンディングには、いくつかの種類があります。
不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法に基づく電子取引の許認可を受けた事業者がオンラインを通じて投資家を勧誘し出資を募り、その出資金を元に不動産を賃貸・売買し、得られた利益(賃料・売却代金)を分配する投資手法です。
不動産クラウドファンディングの詳細は、以下の記事をご覧ください。
以前は、地方において適切に使用されていない土地や建物などの不動産(遊休不動産)を人の流入・雇用創出・地価上昇につながる施設に再生・整備したいという地元のニーズに対し、開発事業者が金融機関から融資を受けて不動産開発・改修事業者に出資し、地方自治体が事業者に補助金を出すということが伝統的に行われていました。
しかし、この伝統的な資金の捻出方法では、資金力のある開発事業者や建設事業者しか事業に参画することができず、開発事業者が現れても、地元主導ではない画一的な不動産開発になる結果、地元のニーズに即した持続的な事業とならない危険性があります。
出典:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」
しかし、土地やビルなどの不動産を小口の有価証券にかえて資金調達・運用をする、いわゆる「証券化」が一般的になると、銀行融資以外の多様な資金確保が可能になりました。不動産だけでなく、ビジネスなどにおいても証券化は資金調達の手段として広く活用されつつあり、貯蓄から投資を推進する機運の高まりに貢献していると言えるでしょう。
不動産投資の他にも、近年市場が拡大している不動産クラウドファンディングを活用することで、今までのような資金調達に頼るのではなく、地元企業や住民、地域金融機関などによる幅広い出資や融資を受けた地元企業が建設・改修に取りかかることができ、投資家(地域内外の人たち)による施設利用や事業への継続的な関与や共感などにより、行政機関からの補助金や単なる資金調達だけでなく事業の好循環が確保することが可能になります。
官民が一体となり、地域の不動産再生・活用を実現できることから、不動産クラウドファンディングは新たな資金調達方法として注目されているのです。
個人が、不動産クラウドファンディングを活用する場合、「少額から資産運用を始められる」「運用の手間と時間を省ける」などといったメリットがあります。
一方で、広く社会にとって、不動産クラウドファンディングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
不動産クラウドファンディングが社会に与える好影響として、以下の3つが挙げられます。
① 不動産開発・改修にかかる資金調達難への対応
② まちづくりの自分事化・関係人口の増加
③ 行政費用の抑制
それぞれの影響について詳しく見ていきましょう。
不動産開発・改修の資金調達は容易ではありません。
その理由は、地方での事業や、空き家などの活用事業は融資の対象になりにくく、対象不動産の担保価値が低いため融資を受けられたとしても少額となるためです。自己資金の不足という理由で、計画を断念する事業者も少なくありません。
しかし、不動産クラウドファンディングを活用すれば、小口で資金を募り、多様なリスク選好を持つ投資家からの資金調達を行いやすくなります。また、対象不動産の収益性に着目した資金調達も可能となるでしょう。
不動産開発・改修がまちづくりに役立つものであっても、地域の興味や関心が高まらなかったり、開発後・改修後の稼働率が低く、失敗に終わるケースも少なくありません。
不動産クラウドファンディングを活用すれば、住民や地域に関心のある個人が投資家となり、継続的に運営状況を確認するようになります。その結果、まちづくりの自分事化、関係人口*の増加によって地域の興味や関心が高まるでしょう。
また、投資家(地域内外の人たち)が対象不動産を利用することで、稼働率の維持・向上によって長期的な安定した施設運営が期待されます。
関係人口*
「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。(総務省「関係人口ポータルサイト」)
自治体が主体となって、歴史的価値のある建物の保存活動や、古くなった不動産の開発や改修を進めるという選択肢もありますが、財政が厳しくて実現が不可能に近いケースや、一時的に予算を確保できても継続的に運営するための費用負担は財政を圧迫することもあるでしょう。
不動産クラウドファンディングを活用した場合、地域の小規模な不動産にも短期間で資金調達ができるようになります。また、民間資金のスムーズな供給で行政費用を抑制することが可能です。
個人が、上記のような案件を取り扱う不動産クラウドファンディングを利用することは、資産運用だけでなく、社会貢献にもつながるのです。
不動産クラウドファンディングが不動産開発事業者・改修事業者にとっては資金調達の新たな手段として、そして、個人にとっては新たな資産運用の手段として注目されていることがわかりました。
しかし、少額出資が可能とはいえ、実際に成功した事例を確認しなければ不安で出資に一歩を踏み出せないという方も多いでしょう。
不動産クラウドファンディングの資産運用の成功事例として以下の二つを紹介します。
それぞれの成功事例について詳しく解説していきます。
ちくらつなぐホテル事業は、不動産クラウドファンディングを通じて、老朽化した小学校の保養所を宿泊施設としてリノベーションして再生した事例です。
千葉県南房総市にある当施設は都内小学校の臨海学校として利用されていましたが、施設の老朽化が進み、耐震面でも問題があったため2011年の東日本大震災以降利用されなくなっていました。
同小学校の卒業生が施設を存続させるために再生事業を計画しましたが、地方でのホテル運営事業のため集客面でのリスクを指摘されるなど、地域の金融機関からは資金調達が困難な状況でした。
そこで、新たな資金調達方法として、不動産クラウドファンディングが実施されました。
不動産クラウドファンディングの詳細は以下の通りです。
施設概要 | |
所在地 | 千葉県南房総市 |
用途 | 宿泊施設 |
敷地/延床面積 | 約4,485㎡/約1,047㎡ |
事業手法 | 不動産特定共同事業(1号事業) |
事業費 | 約2億9,000万円 (クラウドファンディング:約2.4億円(約81.9%)) |
資金調達 | 出資 |
不動産特定共同事業 商品概要 | |
募集額/口数 | 2億3,760万円/23,760口 |
利回り | 5% |
金銭以外のリターンの有無 | 有(宿泊施設利用優待券) |
募集期間 | 2019年7月5日~2019年7月11日 |
運用期間 | 2019年7月31日~2021年7月30日 |
参考:国土交通省『不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック』内「④-1 ちくらつなぐホテル事業」
約2.4億の資金調達に成功した背景には、出資した投資家に対してリターンの他に、宿泊施設の優待券を配布したり、小学校という建物を生かし、新たな宿泊施設としての「町を遊び尽くす、家族の学び舎」というコンセプトや地域の魅力を発信し、地域や関係者の共感を生む仕組みを確立できたことが挙げられます。
小学校の卒業生も多く投資家として出資し、宿泊施設の利用やまちづくりに関与し、関係人口の増加という面でも注目することができます。
出典:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」
宮古島古民家再生事業とは、クラウドファンディングで空き家を宿泊施設に再生し、出資者に宿泊無料体験のリターンなどを提供した事例です。
不動産クラウドファンディングの詳細は以下の通りです。
施設概要 | |
所在地 | 沖縄県宮古島市 |
用途 | 宿泊施設 |
敷地/延床面積 | 約207㎡/約46㎡ |
事業手法 | 小規模不動産特定共同事業(1号事業) |
事業費 | 約2,800万円(クラウドファンディング:950万円) |
資金調達 | 出資 |
不動産特定共同事業 商品概要 | |
募集額/口数 | 950万円/190口 |
利回り | 4% |
金銭以外のリターンの有無 | 宿泊無料体験・宿泊料10%オフなど |
募集期間 | 2022年7月20日~2022年10月31日 |
運用期間 | 2022年12月1日~2027年11月30日 |
参考:国土交通省『不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック』内「⑧-1宮古島 古民家再生」
宮古島はリゾート開発が盛んであるものの、地元住民に充分な利益をもたらしていないのが現状でした。そこで、大型リゾートホテルだけでなく、地元住民自ら創出する地域に密着した宿泊施設を増やしたいとの思いから、事業が始まりました。
出資者がプロジェクトに共感できるように、無料宿泊体験などのリターンに加え、地元住民の料理を観光客にふるまうといった仕掛けが計画されました。
空き家の活用を通じた島自体の住環境改善への貢献や、島の人の暮らしに溶け込む宿泊体験を生み出したことで、地域を知る機会、投資家からの共感を創出したことが成功ポイントとして挙げられます。また、単なる金融商品としてではなく、実際に事業を形作る仲間として、出資者と事業者の交流しながら、事業を推進する強力な仲間を増やせたことも大きな成果と言えるでしょう。
不動産クラウドファンディングの利用を検討している方の中には、将来性が気になっている方も多いことでしょう。
不動産クラウドファンディングの実績・件数・出資額の推移を見ていきましょう。
出典:国土交通省『不動産証券化の実態調査』内「不動産特定共同事業(FTK)の実績」
国土交通省の「不動産証券化の実態調査」によると、2017年12月1日に「小規模不動産特定共同事業」・「適格特例投資家限定事業」を創設、クラウドファンディングに対応してからは年々実績が大幅に増加しています。
出典:国土交通省『不動産証券化の実態調査』内「不動産特定共同事業(FTK)のクラウドファンディングの件数・出資額」
2021年から2022年にかけて、件数は約1.85倍、出資額は約2.61倍と大きく成長しました。市場規模が年々拡大しており、今後も成長が期待できるでしょう。
不動産投資に興味を抱いているものの、投資用不動産は高額で資金が足りない、運用の手間と時間がかかるなどの理由で、なかなか一歩を踏み出せずにいる方も多いでしょう。
不動産クラウドファンディングを利用すれば、小口化することで少額から運用でき、運用の時間と手間を省くことが可能です。
不動産クラウドファンディングは、近年急成長を遂げています。社会に大きく貢献できるとの観点からも、今後も躍進に期待が持てる資産運用の選択肢となるでしょう。
Writer&Supervisor
執筆&監修者
矢野翔一
Shoichi Yano
スマホで完結できる不動産クラウドファンディング「ヤマワケエステート」
HPはこちら 会員登録本コンテンツは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものです。投資家は投資商品ごとのリスクを十分理解したうえで、投資について調査・検討し、自らの責任の下で投資を行うようお願いします(「ヤマワケ」のうち2024年現在でサービスの運営を開始してるプラットフォームは「ヤマワケエステート」のみであり、本コンテンツ中のその余のサービスに関する記載はいずれも暫定的なものにとどまります)。掲載されている情報を基に損害を被った場合でも、運営会社及び情報発信元は一切の責任を負いません。本コンテンツに掲載される情報は、弊社が信頼できると判断した情報源を元に作成していますが、その情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツに関するご質問や参照のお問い合わせは受け付けておりません。なお、本コンテンツの記載内容は予告なしに変更することがあります。
Related article
関連記事
人・物・事(ビジネス)の証券化を目指す投資・配当型クラウドファンディング「ヤマワケ」のニュースや 投資初心者からプロまで多くの方に役に立つ金融・不動産の知識や情報を紹介するオンライン記事を提供します。
read more