クラウドファンディング
2024.08.14
株式会社菱田工務店 代表取締役 大工アーティスト 菱田昌平。
18歳で大工の道に入り日本の伝統技術を学んだ後、知人のいるベルギーへ渡ったのがきっかけで、15〜16世紀のベルギー古民家と日本の伝統技術をミックスした「菱田の家」を考案。
その「二つとない家」は国内外から高い注目を浴び、Instagramのフォロワー数は約21.7万人(取材時)にものぼっている。
自然との調和によって温かみを感じさせる「菱田の家」はティンバーフレームという、太い丸太で柱や梁などの骨格を組み上げ、木・石・土など地元の素材を使い手仕事のみで仕上げている。
地面から離れすぎないように家の外と中の高さを極力近づけ、まるで同じ空間にいるような抽象的な空間をつくりあげる。
そのような、独自のスタイルを手仕事のみでつくる「菱田の家」はどのように生まれたのか。そのルーツを探るため、拠点である長野県坂城町で菱田さんに話を伺った。
まず菱田さんの幼少期について伺ったところ、個性的な経歴を持っていた。中学1年生の頃、「力はあり余っているのに、だんだんと足が遠のいてしまって」と不登校に。そんな菱田さんが大きく変わるきっかけとなったのは、地元でフリースクールをしていた先生との出会いだった。
「中学3年生の頃、地元のフリースクールに通っていたのですが、そこの先生がアメリカに帰るというのでついて行き、2週間ほど滞在しました。
そこで『考えて生きる』という教育を見ました。
当時の日本では、ゼロから自由に考えるというよりも、決まった選択肢のどれかを選ぶというスタイルでした。しかし、ゼロから自由に考えていいのかと衝撃を受けて、そうか、それでいいんだ。じゃあ私なりに人生を考えて生きていこう、とその時に決めました」
この経験が、ご自身の根底にあり「考える」ということが10代からのライフワークになっているという。
そして帰国後、間口が広く、学歴のみに捉われない建築業界を志す。
「建築業界に決めたのは、学歴が全く関係なく受け入れてくれたからというのが大きいです。18歳で60代の親方に弟子入りし、技術を学んで今に至ります。
どの業界もそうだと思いますが、色々なことをやればやるほど課題がたくさんあります。そういう課題を放置せず、自分なりに常に考えて仕事をしていくというのが私のスタイルです」
18歳の頃から建築業界で研鑽を積み、大工職人、設計、そして株式会社菱田工務店の代表として経営も行ってきた菱田さんには、肩書である「大工アーティスト」にも込められた想いがあった。
「私の知人にベルギーの大工職人がいて、彼らと一緒にベルギーで仕事をすることもあるんです。その時に、ベルギーの人たちが彼ら大工職人のことを”アーティスト”と呼んでいました。『考えてつくる人たち』という意味で使われており、それをリスペクトする文化に出会いました。
『考えてつくる』というところは、私のライフワークなので”アーティスト”というのが自分の職業としてしっくりくるように思って”大工アーティスト”と名乗っています。また、自分から発信をして、『考えてつくる人たち』をリスペクトする文化も広めていきたいとも考えています」
「菱田の家」はベルギーの伝統的な木造建築様式に、日本の技術をミックスさせた独自の形式でつくられている。そのスタイルができたのは、菱田さん自身が自宅を建てる際に、ベルギーでの学びをベースにしたことがきっかけだった。
「2007年頃からヨーロッパの職人さんとの繋がりがあって、基本は日本で大工をしながら、毎年ヨーロッパでも仕事をするということを続けています。
その中で私の自宅を建てるタイミングがありました。
普段はお客様が暮らす家を作っていますが、自分自身の『菱田の家』とはどんなものが良いかと考えた時に、ベルギーで15〜16世紀ぐらいに建てられていた、家畜と人が一緒に暮らす家を思い浮かべました。
その家を、今のベルギーの人たちが素敵にリノベーションして暮らしているのを見て、『ああ、この暮らしが自分に合うな』と思ったのです。
ヨーロッパの職人さんは、仕事を楽しむんです。
その楽しむ気持ちが建物に表れていて、暮らしが可愛いとか、素敵とか、そういう遊び心やこども心のようなものがすごく感じられます。そのベルギーの古民家を参考にして、私の自宅としてつくろうということになりました」
「まず一つは、自然素材を使うということです。
私のいる坂城町は田舎町ですが、東京やベルギーから帰ってくると、この街の自然が身近にあることの良さをすごく感じます。
帰ってきてふっと癒やされる心落ち着ける自然が、一番の魅力だと思っています。だからこそ、私がつくる家には自然素材を使うと決めています。
もう一つは、人の手仕事です。
AIが発達する現代で、人がつくるということにものすごく価値があると思っています。
AIにはAI、人には人の価値があります。手から生み出されるものならではの価値が存在し続けると確信しています。だからこそ、私は手仕事にこだわるということを決めています。
最後の一つは、美しさ。
世界中を回るなかでいろんな人に会いましたが、美しいものが嫌いな人に私は会ったことがありません。美しいものって、ほとんどの人が好きなんですね。
ですので”自然素材、人の手仕事、美しさ”この3つを暮らしのなかで感じていただけるような家をお作りしています」
今回、菱田さんは「古る、美る(ふる、びる)」というコンセプトのもと、長野県軽井沢町に、新しい『菱田の家』をつくっている。
「木や石、土などの自然素材は、時が経つと傷んだり汚くなるのではなく、美しくなっていくものだと思っています。
新しい素材に機械でエイジングをかけて古いように見せるのではなくて、時が経つほど自然に美しくなるような素材の使い方が、人の手仕事によって生まれたものにはあるのです。
手仕事によって生まれた先に、時がつくる、古く、美しくなっていくという考え方がとても好きなので、この考えを重要なコンセプトとしています」
「菱田の家」をつくるにあたって重要なことは他にもある。
それは、一緒につくるスタッフの存在だ。
菱田さんが株式会社菱田工務店を創業して今年で13期目。
現在40人ほどのスタッフとともに働いており、そのうち大工職人は10名ほど。
年に2回は新しいスタッフを迎える。「菱田の家」の品質保持や家をつくり続けるためには、スタッフの育成や会社組織の確立も重要な要素だと菱田さんは言う。
「いま、ありがたいことに世界中から社員になりたいという子が集まってくれていますが、設計者になりたいという人が一番多くて、人材確保・育成が難しいのが職人ですね。
どうしても昔から大変なイメージがあるので、実際になり手がいない状況が業界としてずっと続いているのです。
なので、弊社は弟子と呼んでいますが、必ず社員雇用で責任を持って教育しています」
「修行期間の6年間で技術や一通りの作業手順を覚えてもらい、その後は独立。うちの仕事を外部サポートとして手伝ってもらったり、会社を作ってそこで一緒にやったり。
そうやって活躍できる土俵づくりを、私がやっていくことが大事だと思っています」
お客様の暮らしをお作りするため、まずはチームに心を配る菱田さん。
自身のInstagramでインターンを募集したところ、3日間で世界中から120人の応募があったという。
「ちょうど今、フランスとイタリアの職人さんが男女一緒に来てくれています。
日本の建築は昔から評価が高いのですが、日本のこの業界はなかなか経営も難しいですし、人を雇い入れるのもすごく難しいんです。そうすると業界全体で企業が減ってしまい、学びたいけど学ぶ場所がないという問題が出てきてしまって。
そんななか、皆さんが注目してくださっている『菱田の家』を評価していただき、インターンという制度もある弊社で学びたいと言ってくださる方が多いんです」
菱田さんがつくる「菱田の家」は、住まうひとが暮らしを送るためのキャンバスであるという。
「私がつくるのは、あくまでも生きる、暮らしを送るための真っ白なキャンバスです。そこで送る日々の暮らしのなかで、人が笑ったり泣いたり、生まれたり亡くなったりする。
そのストーリーは、私が描けるものではありません。自然の素材で、手仕事で、美しくつくるキャンバスに、そこでの『暮らし』という、素敵な彩りを重ねていっていただけるととても嬉しいです。
その土地で、暮らすお客様がいて存在する家って、二つとしてないんです。
同じお客様でも、別の土地で家を建てるとまた違うものになる。
その土地でしか味わえない暮らし、生き方というものを楽しんでいただきたいなと思っています」
ヤマワケエステートの「軽井沢 ShoheiHishida別荘プロジェクト」では、今回菱田さんがつくっている「菱田の家」の建築費用を投資対象として募集しています。
「『菱田の家』を色んな方に知っていただきたい、見ていただきたい。できれば暮らしていただきたいと思っています。なぜかというと、私がご提案差し上げる暮らしというのは、日本ではほとんど体験できることがないからです。
日本の住宅産業は、基本的に設計と施工が完全に離れていますし、もっと言えば、既製品である商材がたくさんあるので、その多くの選択肢からのチョイスだけで家が出来てしまうことが多く、0から生まれた家というのはほとんどないというのが現状です。
人生もそうで、私が幼少期に感じていたように、実は人から提案された選択肢からのチョイスで生きていたりして、本当にゼロイチの暮らしって実は全然作られていないのではないかと思います。
私のつくる『菱田の家』は、ベルギー古民家がルーツとなっているものをアレンジし、そこに日本の、その土地の素材を使って、人の手でつくることで新しく、そこにしかないものになっています。
ご興味がある方は是非、現場を見ていただいたり、触っていただいたり、できれば泊まっていただいたりして体感していただければ嬉しいです」
今回つくる家もまた、菱田さんの経験・想いをのせた、軽井沢にしかない、唯一無二のキャンバスが出来上がるのだろう。
そこでまた、時が育む「古る、美る」美しさを、暮らしの中で感じていけたら素敵なことだと思う。
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