用語解説
2024.01.15
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて多くの人々から資金を集め、特定のプロジェクトやビジネス、イベントなどの様々な事業に活用する資金調達手法です。Crowd(群衆)、Funding(資金調達)という二つの英語を組み合わせた造語から、「クラウドファンディング」と呼ばれます。
一般の人たち(支援者)が、個人や団体(起案者)が持つ独自のアイデアやビジョンに共感を示し、その実現に資金的な支援をすることで、多様なプロジェクトやビジネスが生まれやすい環境を作り出しています。
クラウドファンディングは、起案者がプロジェクトへの想いを社会に発信し、プロジェクトに賛同する支援者によって成り立っています。
クラウドファンディングのイメージ
クラウドファンディングの歴史は古く、起源をさかのぼると類似した行為として、17世紀初頭には書籍の印刷代を募るかわりに、その見返りとして寄付した人の名前を書籍に掲載する権利を提供したといわれています。
また、アメリカでは1884年に自由の女神像の台座部分を建設するため、新聞出版者だったジョーゼフ・ピューリツァーが自身の経営する新聞「ニューヨーク・ワールド」の紙面で告知し、一般市民から寄付金を募るという手法が取られています。結果、約6ヶ月で10万ドル近くの寄付を集め、無事自由の女神が建てられました。
そして、インターネットが普及した21世紀に入ってからは、クラウドファンディングは急速に拡大の一途をたどります。特に2008年のリーマンショックによる金融危機後、伝統的な資金調達ルートが厳しくなったことや、ソーシャルメディアが発展・普及したことで、クラウドファンディングは多くのスタートアップ企業やクリエイターにとって資金調達のための重要な選択肢となりました。
近年では、株式会社矢野経済研究所が2022年8月に発表した「国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2022年)」によると、国内のクラウドファンディングの市場規模は2017年から2021年の間に約1,500~1,800億円以上の範囲で推移しており、支援者と起案者たちのニーズの多さから、引き続き市場性は高いと見られています。
クラウドファンディングの起案者は、様々なクラウドファンディングプラットフォームを利用してプロジェクトの詳細を公開します。
プラットフォーム内でプロジェクトページを作成し、目標金額、概要、特典などのプロジェクト内容が明示されます。
その後、支援者がプラットフォームを通じて資金を提供し、プロジェクトが成功した場合、設定された特典や利益などが支援者に分配されるという流れです。
以上のように、クラウドファンディングは多くの人々が資金を提供することで、新しいビジネスやプロジェクトを実現する手法です。
インターネットを通じたアクセシビリティ(利用のしやすさ)によって、多くの人々にとって新しいチャンスと可能性を提供しています。
クラウドファンディングには、主に以下の様な種類があります。
・購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、プロジェクトや商品、イベントなどに対して、支援者から資金を募るものです。支援者は、リターンとして商品やサービスを受け取ります。
・寄付型クラウドファンディング
インターネット上などで公開されている個人・企業のプロジェクトに、支援者が寄付として資金提供するのが寄付型クラウドファンディングです。基本的に寄付というスタンスですからリターンはありませんが、お礼状などを受け取ることもあります。
・融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングサービスの運営会社が投資家から小口資金を集めて大口化し、資金が必要な企業に融資を行うものとなります。支援者は融資の利息分をリターンとして受け取ります。
・株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングとは、非上場企業が株式を発行し、多くの投資家から少額ずつ資金を集める仕組みです。この方法を利用すると、支援者は未公開株の株主となり、将来的に配当がなされた場合に配当金を受け取ることができます。
・ファンド型クラウドファンディング
ファンド型クラウドファンディングは、支援者がある特定の事業者に直接投資を行い、事業者はその出資金で行った事業により得られた利益などを支援者に分配します。リターンは、事業業績により変動します。
・不動産型クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法*に基づく電子取引の許認可を受けた事業者(クラウドファンディング業者)がインターネットを通じて投資家を勧誘し出資を募り、その出資金を元に不動産を賃貸・売買し、得られた利益(賃料・売却代金)を分配する投資手法です。
従来の不動産投資に比べて、少額から参加できる点や、投資家が複数のプロジェクトに分散投資することができる点などが魅力です。
※ クイック用語解説 ※
*不動産特定共同事業法
出資を募って不動産を売買・賃貸等し、その収益を分配する事業を行う事業者について、許可等の制度を実施し、業務の適正な運営の確保と投資家の利益の保護を図ることを目的として、平成6年に制定された法律(引用:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)法の概要」より)
クラウドファンディングは、様々な可能性を秘めた資金調達方法ですが、起業家やアーティスト、多様なプロジェクトを支援したい一般の人々にとっても、プロジェクトによっては少額から投資できる新たな形として注目されています。
しかし、クラウドファンディングにはメリットとデメリットが存在します。
それらを理解することで、投資する側、そして資金を募る側の両方がより良い選択をする手助けとなるでしょう。
ここでは、起案者、支援者それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
起案者の主なメリット(⚪︎)
クラウドファンディングによって、これまで以上に資金調達の選択肢が広がりました。
今まで金融機関からの融資やローンが難しかった企業や個人でも、インターネット上でプロジェクトに賛同してくれた人々から、支援という形で幅広く資金を集めることができます。
また、新商品などを市場に出す前には、クラウドファンディングで幅広い層に周知させながら商品やサービスを提供することで、どれだけニーズがあるかなどの反応を見ることができますし、PRやテストマーケティングとしても活用できます。
起案者の主なデメリット(✖︎)
実施方式によっては、支援金額が目標金額に達しない場合、プロジェクトが実行されない可能性があります。賛同を得られなければ資金調達に時間がかかり、管理コストも発生するでしょう。
そのため、クラウドファンディングを始める前にプロジェクトの成功率や内容、クラウドファンディング以外の資金調達方法を事前に調べておく必要があります。
支援者の主なメリット(⚪︎)
クラウドファンディングでは、独自のアイデアや社会貢献プロジェクト(事業)に共感して支援を行うことができます。たとえば、新しい技術やビジネス、アートなどの分野で挑戦する人や企業を直接サポートするようなケースがあります。
他にも、投資型のクラウドファンディングであれば、少額から始められる資産運用としても活用できます。1万円程度から投資可能な不動産型クラウドファンディングを提供している事業者もありますので、大きな金額が必要な現物投資とは異なる形で投資を始められることも魅力の一つでしょう。
クラウドファンディングのプラットフォーム上には数多くのプロジェクトが掲載されているため、少額ずつ複数のプロジェクトに投資することでリスクを分散できます。
支援者の主なデメリット(✖︎)
クラウドファンディングの最大のリスクは、投資先のプロジェクトが実行されないことです。初期段階のプロジェクトは未知数であり、成功する保証はありません。そのため、投資金が戻ってこない、あるいは期待したリターンが得られない可能性があります。
起案者のプロジェクトは、必ずしもすべての情報が公開されているわけではありません。プロジェクトの背景や詳細なビジネスプラン、進行状況の確認は、随時リサーチをして確認する必要があります。
クラウドファンディングでは、一度支援を行うと基本的にキャンセルができません(条件によってはキャンセル可能な場合もあります)。集めた資金の使用用途が不透明なケースもありますので、支援先をしっかり検討して選びましょう。
総じて、クラウドファンディングは新しい形の投資として魅力的な側面を持っていますが、それに伴うリスクもあります。そのためには投資について十分に理解し、情報収集するようにしてください。
クラウドファンディングのプラットフォームでプロジェクトを立ち上げる際、実施方式にはいくつかの種類があります。
その中でも特に広く用いられているのが「All in(オールイン)」と「All or Nothing(オールオアナッシング)」という方式です。
この二つは、資金調達の成功・失敗と、それに伴うリスクやリターンに大きな影響を与えるため、プロジェクトオーナーと支援者の双方にとって重要となります。
All in方式は、目標金額に達していなくても、集まった資金はすべて起案者に渡される仕組みです。
目標金額に達していなくても、プロジェクトの続行が可能であったり、資金の一部でも何らかの成果を出せると考えられたりするプロジェクトに適しています。
その一方で、1円以上の支援があればプロジェクトを必ず実行しますので、支援者へのリターンも必要になります。
メリット
・起案者は、目標金額に達しなくても、集まった資金を獲得できる
・支援者としては、リターンを受け取れることが前提
デメリット
・目標金額に関わらず、プロジェクト実行義務がある
・プロジェクトの赤字リスクがある
All or Nothing方式は、支援金額が目標金額に達した場合にのみ、集めた資金が起案者に渡される形式です。目標金額に達しない場合、支援者の資金は全額返金されます。
テストマーケティングとして市場リサーチを行いたいプロジェクトに有効です。
メリット
・目標金額を達成した場合のみ、リターンの履行義務が生じる
・市場の反応を見た上でプロジェクトを推進することができる
デメリット
・目標金額に達しないと、一切の資金が得られない
・達成しない場合はキャンセル扱いで返金が必要となる
このように、All in方式とAll or Nothing方式にはそれぞれ特有のメリットとデメリットがあります。
どちらの方式が適しているかはプロジェクトの性質、目標金額、期間、そして達成したい目標によって大きく異なります。
したがって、プロジェクトを成功させるためには、両方の特性をしっかりと理解し、プロジェクトに最も適した実施方式を選ぶ必要があります。
ここでは、支援者がクラウドファンディングで出資や投資を行う基本的な流れを見てみましょう。
まず、投資したいプロジェクトが掲載されているクラウドファンディングのプラットフォームを選びます。選ぶポイントとしては、プラットフォームの信頼性、手数料、掲載されているプロジェクトの種類などが挙げられます。
選んだプラットフォームでアカウントを作成します。一般的には、メールアドレスとパスワードを設定し、必要な場合は身分証明書での認証が求められます。
アカウント作成後、投資したいプロジェクトを選びます。募集ページには、ビジネスプラン、リターン、リスクなどの詳細が書かれているので、しっかりと読み込んで選びましょう。
出資・投資したいプロジェクトが決まれば、その額を決め、資金の振り込みを行います。支払い方法はプラットフォームによって異なり、クレジットカード、銀行振り込み、電子マネーなどがあります。
出資・投資が完了した後は、募集状況やプロジェクトの進行状況などがプラットフォーム側から報告されます。この報告はEメールで伝えられるのが一般的です。
プロジェクトが成功し、目標が達成された場合、投資額に応じたリターンが支援者に対して返されます。これもプラットフォームを通じて分配されたり、商品などが直接届けられたりすることもあります。
最後に、プロジェクトに対する評価を行うことがあります。これは次回の投資選定に役立つだけでなく、プラットフォームやプロジェクトを新たに始める方にとっても貴重な情報となります。
以上がクラウドファンディングで出資や投資を行う際の基本的な流れです。
ただし、出資・投資はリスクを伴うこと、そしてプロジェクトが失敗すると資金を失う可能性があることを常に念頭に置くことが重要です。
次に、起案者(プロジェクトオーナー)として出資を集めた場合の基本的なステップを解説します。
まずは、どのようなプロジェクトで資金を集めるのか、そのアイデアと計画を明確にします。ターゲットとする支援者、資金の使い道、期限などを詳細にまとめます。
信頼性や取扱い手数料、掲載されているプロジェクトの種類に基づいて、最適なクラウドファンディングプラットフォームを選びます。
選定したプラットフォームでプロジェクトページを作成します。ここには、プロジェクトの詳細、目標金額、リターンなどを記載します。
集まった資金が目標に達するためには、プロジェクトを広く知ってもらう必要があります。そこでSNSやメール、知人への協力依頼をするなどしてプロモーションを行います。
プロジェクトページが完成したら、いよいよ公開します。資金が集まり始めたら、プロジェクトの進行状況を随時SNSなどで発信して再度プロモーションすることが重要です。
目標金額に達した場合は、その資金を活用してプロジェクトを実行します。そして、進捗状況や成果を支援者に報告します。
プロジェクトが成功した場合、出資者に対して募集時に設定していた商品やサービス、配当などのリターンを提供します。支援者への終了報告も忘れずに行いましょう。
クラウドファンディングは、プロジェクトの起案者と一般の人々が支援者がつながり、インターネットを通じて必要な資金を集めることができる現代的な資金調達手法です。
プロジェクトの透明性と相互の信頼が必要不可欠なことを理解し、クラウドファンディングを有効活用して独自のビジネスやプロジェクトの実現に挑戦してみましょう。
Supervisor
監修者
水野 崇
Mizuno Takashi
スマホで完結できる不動産クラウドファンディング「ヤマワケエステート」
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