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2025.12.12
雑所得とは、所得税法で定められた10種類の所得のうち、他の区分に当てはまらない収入をまとめたものです。
「収入」から、その収入を得るために支出した必要経費を差し引いた金額が「所得」です。
所得の種類は次のとおりです。
| 所得の種類 | 代表例 |
| 利子所得 | 預貯金の利息、公社債の利子など |
| 配当所得 | 株式・投資信託の配当金など |
| 不動産所得 | アパート・駐車場などの賃料収入 |
| 事業所得 | 自営業・フリーランスなど継続的な事業収入 |
| 給与所得 | 会社員の給料やボーナスなど |
| 退職所得 | 退職金、一時金など |
| 山林所得 | 山林の伐採・譲渡による利益 |
| 譲渡所得 | 株式や不動産の売却益など |
| 一時所得 | 懸賞金、保険の満期金など一時的な収入 |
| 雑所得 | 上記以外の収入(副業・年金・暗号資産など) |
国税庁では「雑所得」を以下の3つに分類しています。
言い換えれば、「どの所得にも当てはまらない収入」が雑所得です。近年では副業人口の増加に伴い、雑所得に該当するケースが増えています。
参考:国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」(最終閲覧日:2025年10月24日)
雑所得は、収入の「継続性」「独立性」「営利性」があるかどうかで判断されます。
たとえば、毎月安定して仕事を受注し、取引先との契約や設備投資を行っている場合は「事業所得」と判断されることがあります。
一方、空いた時間に単発で記事を執筆する、ポイントサイトや投資で利益を得る場合などは、一般的に「雑所得」と判断されやすいです。
給与所得は、雇用契約がある会社から支払われる給料や賞与を指し、源泉徴収(税金の天引き)が行われる点が異なります。
| 区分 | 主な収入例 | 特徴 |
| 給与所得 | 給与・賞与 | 源泉徴収あり、雇用関係がある |
| 事業所得 | 継続的な副業・自営業 | 独立性・継続性がある |
| 雑所得 | 単発副業・ポイント・講演料など | 継続性が低く、他の所得に該当しない |
参考:国税庁「No.1350 事業所得と雑所得の区分」(最終閲覧日:2025年10月24日)
一時所得は、「臨時的で営利目的ではない収入」を指します。
たとえば、懸賞の当選金や生命保険の満期金などです。
雑所得との大きな違いは、「継続性」と「営利性」があるかどうかです。
継続的に収入を得ているなら雑所得、偶然や一度きりの収入なら一時所得に分類されます。
代表的な例
また、一時所得には 特別控除50万円 があり、
(所得 - 経費 - 50万円)× 1/2 の金額が課税対象となります。
つまり、少額の一時的な収入なら課税されない場合もあります。
このように、「継続しているか」「営利目的か」を基準に区分を見極めると、確定申告の判断がスムーズになります。
参考:国税庁「No.1490 一時所得」(最終閲覧日:2025年10月24日)
公的年金による収入は、原則として「雑所得」に分類されます。
国税庁の定義では、公的年金などによる所得は、給与や事業所得のように「労働や取引の対価」として得るものではないため、「公的年金等に係る雑所得」として扱われます。
対象となる主な「公的年金」
遺族年金や障害年金などは「非課税」です。生活保障を目的とした給付のため税金はかかりません。
なお、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は
・年金形式で受け取る→雑所得
・一時金で受け取る→退職所得
に区分されます。
まずは、自分の受け取る年金が「課税」か「非課税」かを確認しておきましょう。
近年、控除額は段階的に見直されています。 最新の控除額を確認して申告漏れや過払いを防ぐことが大切です。
公的年金による雑所得は、次の計算式で求めます。
公的年金等の雑所得 = 年金収入金額 − 公的年金等控除額
この「公的年金等控除額」は、年金の収入金額と受給者の年齢(65歳未満/65歳以上)によって決まります。
たとえば、
※65歳以上で年金収入が200万円の場合、
200万円 − 120万円 = 80万円 が課税対象となります。
また、給与収入など他の所得がある場合は、給与所得と合算して総合課税されます。
給与など他の所得がある場合は合算され、税金額が変わります。毎年届く「公的年金の源泉徴収票」は、確定申告に必要な書類のため、必ず保管しましょう。
控除の仕組みを理解しておくことで、 年金受給者でも「納めすぎ」「申告漏れ」を避けられます。
参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(最終閲覧日:2025年10月24日)
会社員やフリーランスの副業収入の多くは「雑所得」に分類されます。
特に、単発や不定期の仕事で得た報酬は、事業としての継続性がないため「雑所得」と判断されやすいです。
たとえば、次のようなケースです。
副業が一時的で、取引先管理や収支管理など事業体制が整っていない場合は、雑所得として申告するのが一般的です。
なお、雑所得でも2022年以降は帳簿保存が義務化されています。スマホ収入やポイント報酬でも、金額に関わらず記録を残す必要があります。
同じ副業でも、継続的・計画的に収益を上げている場合は、「事業所得」とみなされる可能性があります。
たとえば、次のようなケースです。
こうした場合は、事業所得として認められることが多く、以下のような節税メリットを受けられます。
なお、開業届を出していなくても、実態として「事業」とみなされることもあります。
判断が難しい場合は、税務署や税理士に相談しておくと安心です。
投資やポイント運用などによる利益の一部も、「雑所得」に分類されることがあります。
代表的なのは以下のようなケースです。
ただし、投資の種類によって所得区分や課税方法が異なります。
| 投資の種類 | 所得区分 | 税率・課税方法 |
| 株式・投資信託(上場) | 譲渡所得・配当所得 | 分離課税(約20.315%) |
| FX・CFD取引 | 雑所得(申告分離課税) | 一律20.315% |
| 暗号資産・クラファン収益 | 雑所得(総合課税) | 他の所得と合算して累進課税 |
暗号資産やクラウドファンディングの利益は、「総合課税」となり、給与など他の所得と合算して課税されます。取引履歴をExcelなどで整理し、確定申告に備えておくことが大切です。
雑所得には、副業や年金以外の「分類しづらい収入」も含まれます。
代表例は次のとおりです。
・講演料・原稿料・セミナー登壇料
・SNS投稿による広告収入
・商品紹介やレビューの報酬
・ブログやYouTubeのアフィリエイト収益
・ポイントサイトやキャッシュレス決済の還元(現金化できるもの)
継続的な運営体制や収益目的が明確でなければ、雑所得に分類されます。
一方で、購入時に付与される割引相当のポイントは、値引き扱いになり課税対象外となる場合があります。
収入が多様化している今、「副業と呼べるほどではないが少し収入がある」というケースでも、課税対象になる可能性がある点を理解しておくことが大切です。
一方で、「臨時的に得た収入」は雑所得ではなく「一時所得」に分類されることがあります。
代表的な例としては以下のようなものがあります。
区分の目安は次の通りです。
| 判定基準 | 雑所得 | 一時所得 |
| 継続性 | 継続して収入を得ている | 一度きりの収入 |
| 営利目的 | あり(副業的要素) | なし(偶発的) |
| 主な例 | SNS収益・講演料・ポイント報酬 | 懸賞・保険金・臨時謝礼 |
一時所得は税負担が軽くなることがあり、次の計算式で課税額が決まります。
(一時所得の金額 − 特別控除50万円)× 1/2
たとえば、「一度きりの講演で得た報酬」は一時所得に該当しますが、毎年複数回講演を行う場合は雑所得として扱われます。
そのため、「一時的な収入」なのか「継続した活動」なのかを区別して整理しておくことが、確定申告時のトラブルを防ぐポイントです。複数の収入源がある場合は、発生の経緯・時期・金額をメモしておくと安心です。
雑所得の金額は、
「収入 − 必要経費」 で計算します。
国税庁では、雑所得を次の3つに分類して計算する方式を採用しています。
① 公的年金等に関する所得
→ 収入金額 − 公的年金等控除額
(控除額は年齢や年金収入額によって異なります)
② 業務に係る所得(副業・投資など)
→ 総収入金額 − 必要経費
③ その他の所得(ポイント・講演料など)
→ 総収入金額 − 必要経費
例)
副業で報酬が30万円あり、取材交通費や通信費など経費が5万円かかった場合、
30万円 − 5万円 = 25万円(雑所得)
確定申告の際は、3つの分類別に金額を整理しておくとスムーズです。
参考: 国税庁「No.1500 雑所得」(最終閲覧日:2025年10月24日)
必要経費とは、「その収入を得るために直接かかった費用」 のことです。
副業や投資の場合は、以下のような支出が該当します。
経費として認められるためには、業務との関連性が説明でき、領収書や明細があることが重要です。
私用と混在する費用は、使用割合で按分(あんぶん)します。日々の利用状況を簡単にメモしておくと判断しやすくなります。
雑所得の多くは総合課税となり、給与所得など他の所得と合算して所得税が計算されます。
所得が増えるほど税率が上がる「累進課税制度」が適用されます。
総合課税の税率は以下のとおりです。
累進課税の例(所得税)
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
※住民税は別途10%、復興特別所得税あり
一方、以下は「申告分離課税」となり、給与などと合算しません。
対象例)
・FX、CFDや先物取引
→ 税率は一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
自分の収入が総合課税か分離課税かを確認することが、申告の間違いを防ぐ近道です。
参考:国税庁「所得税の税率」(最終閲覧日:2025年10月24日)
参考:国税庁「上場株式等の配当所得等に係る申告分離課税制度」(最終閲覧日:2025年10月24日)
雑所得について確定申告が必要かどうかは、
「給与の有無」「所得金額」「基礎控除額」「住民税の判断基準」によって変わります。
2025年度税制改正により、基礎控除額が段階制となり、所得金額に応じて58万円〜95万円に拡大されます。所得の低い人ほど控除額が大きくなる仕組みです。
※令和9年(2027年)以降は一律58万円に戻る予定
ここでは、代表的な3つのケースに分けて見ていきましょう。
会社員やパート・アルバイトとして給与所得がある人の場合、
副業や投資などの雑所得が 年間20万円を超えると確定申告が必要です。
これは、いわゆる「20万円ルール」と呼ばれる国税庁の緩和措置です。
ただし、次のような例外に注意が必要です。
例)
副業のWebライター収入18万円
ポイント運用利益7万円
→合計25万円となり確定申告が必要
複数の副収入は合算して判定されるため、証拠となる明細や取引履歴を保管しておくことが大切です。
給与所得がなく雑所得だけの場合、確定申告が必要かどうかは「所得が基礎控除額を超えるかどうか」で判断します。
2025年度税制改正により、基礎控除額が所得金額に応じて58万円〜95万円に拡大されます。(所得132万円以下の場合)
その結果、申告義務がなくなるケースが増えます。
例)
動画編集の年間収入:70万円
必要経費:25万円
所得:70万円−25万円=45万円
→基礎控除内のため申告不要となる可能性あり
ただし、住民税の申告基準や地域ごとの取り扱いは異なる場合があるため、お住まいの市区町村窓口に確認しておくと安心です。
※基礎控除額の段階制は2025年〜2026年までの適用
※令和9年(2027年)以降は一律58万円に戻る予定
年金も雑所得に区分されますが、「公的年金控除」や「基礎控除」が適用されるため、年金収入だけの場合、申告不要となるケースが多いです。
次の条件を満たす場合は、確定申告不要です。
ただし、以下のようなケースでは申告が必要となります。
企業年金・個人年金を含む複数の年金を受給している場合は、合算した金額で判定します。
また、2025年度税制改正により基礎控除額が所得に応じて段階的に拡大されます。
その結果、年金収入と少額の副業収入がある方でも申告不要となるケースが増える可能性があります。 (※2027年以降は基礎控除額は一律58万円に戻る予定)
副業や投資収入がある方は、早めに年収を整理しておくと安心です。
雑所得として副業や投資をしている人でも、正しい申告と経費管理を行えば、税負担を抑えることが可能です。ここでは、青色申告ができるケースや、日々の管理のコツを解説します。
副業であっても、継続的かつ営利目的で一定の規模がある場合には、
「事業所得」として扱われることがあります。
この場合、青色申告を選択でき、次のような節税メリットを受けられます。
たとえば、副業ライターとして毎月継続的に仕事を受注している場合や、アフィリエイトで安定した収益がある場合は、「雑所得」ではなく「事業所得」として認められる可能性があります。ただし、一時的な取引や不定期な活動は原則「雑所得」となるため、判断に迷う場合は税理士や税務署に相談すると安心です。
節税の基本は、「経費を正確に記録すること」です。雑所得でも、収入を得るために直接必要な支出は経費として差し引けます。
主な例は以下の通りです。
領収書は紙でも電子データでも構いません。
ただし、電子帳簿保存法に対応した形式で保存しておくと、青色申告特別控除(65万円)の要件を満たしやすくなります。
また、自宅の光熱費や家賃を一部経費にする場合は、「業務使用割合」を示す記録(例:作業時間・部屋の使用面積など)を根拠として残しておくことが重要です。
申告をスムーズに行うには、日々のデータ整理が鍵です。
次の3つの習慣を意識するだけで、確定申告の負担を大幅に減らせます。
こうした習慣をつけておくと、確定申告時の整理の手間が大幅に減ります。また、e-Tax(電子申告)を利用すれば、控除の適用がスムーズで書類提出も簡単です。
副業やポイント収入などは、雑所得として申告漏れや計算ミスが起こりやすいです。日々の記録や取引履歴の整理を習慣化しましょう。
雑所得は「他の所得に当てはまらない収入のまとめ」と考えるとわかりやすいです。身近な例では、公的年金、会社員の副業、投資の利益、ポイントサイトの収入などがあります。
確定申告では、まず「自分の収入がどの種類に当てはまるか」を整理することが大切です。経費として認められる支出をしっかり記録しておくと、税金の負担を抑えることもできます。
基本の計算は「収入 − 経費」です。状況に応じて総合課税または分離課税が適用されるため、仕組みを知っておくと安心です。
初めての方でも、月ごとに収入と支出を整理していけば確定申告は難しくありません。なお、住民税の申告が必要となるケースもあるので忘れずに確認しましょう。
迷ったときは税務署や税理士などの専門家に相談することが安全です。雑所得のルールを理解しておけば、副業や投資にも前向きに取り組めます。
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