マネー&ビジネス
2024.07.23
2024年夏以降のマーケット展望について、日米の金融政策を中心に分析します。米国ではFRBが高い金利を維持し、インフレ抑制に取り組む一方、日本では日銀が国債購入の減額方針を決定しました。これにより、市場は大きな影響を受けることが予想されます。また、サマーラリーや夏枯れ相場など季節的なアノマリーも考慮しつつ、猛暑による関連銘柄の動向にも注目します。
2024年夏のマーケット展望で最初に日米の金融政策を扱う理由は、世界経済や日本経済を左右する主要な要因だからです。金融政策は金利動向や通貨価値、市場心理に大きな影響を与え、投資戦略を左右する重要な要素となります。インフレ抑制と経済成長のバランス、市場への影響などを分析することで、より的確な投資判断が可能になります。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2024年6月13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を5.25~5.5%の範囲で据え置くことを決定しました。FRBはインフレ抑制のために高い金利水準を維持することを目的としています。会合後の記者会見で、パウエル議長は、インフレ率が継続的に2%に向かっている確信が得られるまで利下げは適切ではないと述べ、利下げの時期を慎重に見極める考えを強調しました。
FRBは、会合に参加した19人の政策金利見通しも発表しました。2024年末時点の金利水準の中央値は5.1%で、1回の利下げが想定されます。2025年末の中央値は4.1%と前回より引き上げられましたが、2026年末は3.1%と前回と同じでした。
今後のFOMCの日程を考えると、利下げの時期は米大統領選後の12月がもっとも有力だと言われています。過去の大統領選挙後のFOMCの動きを見ると、選挙後に政策変更が行われることが少なくないからです。例えば、2016年の大統領選挙後には12月に利上げが実施されました。このような過去のパターンからも、選挙後の12月の会合が政策変更のタイミングとして有力であることがわかります。
・2024年今後のFOMC日程
7月30日~7月31日
9月17日~9月18日
11月6日~11月7日
12月17日~12月18日
日本銀行は2024年6月14日の金融政策決定会合で、国債購入の減額方針を決定しました。植田和男総裁は記者会見で、減額規模が「ほんのわずか」ではなく「相応の規模」になると発言。さらに、国債市場の柔軟性を確保しながら予見可能な減額を実行し、国債の償還に伴い保有残高が減少していくと述べました。
減額期間について、植田総裁はまず1~2年実施した後に、市場の反応や経済・金融情勢を考慮して進め方を判断すると述べています。市場参加者とのコミュニケーションの重要性を強調し、情報リークのリスクを回避するために、減額方針決定前に個別の金融機関から意見を聞くのは難しいと説明しました。
最近の金利動向について、植田総裁は、長期のインフレ予想の上昇にもかかわらず、長期の実質金利が依然として低水準であり、金融政策は緩和的であるとの認識を示しました。7月30~31日の次回会合で具体的な減額計画が決定される予定です。
・日銀金融政策決定会合の日程
7月30日~31日
9月19日~20日
10月30日~31日
12月18日~19日
サマーラリーとは、夏場に米国株式市場で株価が上昇する傾向を指すアノマリーです。アノマリーとは、理論的な根拠はないものの、経験的に観測できる市場の規則性のことを言います。サマーラリーは一般的に、米国の独立記念日(7月4日)からレイバー・デー(9月の第1月曜日)までの期間を指し、この期間に投資家が優良株を購入することで株価が上昇すると考えられています。
サマーラリーの原因は、経済状況や企業業績などの要因によって変化しますが、米国の投資家が夏休み前に優良株を購入することで株価が押し上げられるとも言われています。この現象は市場の経験則として知られていますが、経済状況や投資家の行動によって変化します。
一方、夏枯れ相場というアノマリーもあります。「夏枯れ相場」は、夏場に市場参加者が減少し、取引が減少し、相場の動きが鈍くなることを意味する相場格言です。
この時期は、市場が閑散とし、わずかなポジションの偏りや小規模な変動要因があっても、株価が通常より過敏に反応しやすくなり、株価の急騰や急落が起こりやすくなります。買い材料のある銘柄に短期資金が向かうことで株価が上昇する場合もある一方、相場変動リスク回避のための現金化により、株価が下落しやすくなる傾向があります。
「サマーラリー」と同様に、「夏枯れ相場」は米国市場に由来する用語ですが、日本株でも同様の動きが見られます。特に日本では、相場変動リスクを避けるために積極的な売買を避ける市場参加者の傾向もあり、8月のお盆の時期に市場がさらに閑散とし、「夏枯れ相場」の様相が強まる傾向があります。
日本では「夏の円高」という現象が見られることがあります。お盆の時期には多くの市場参加者が休暇に入るため、取引量が減少し、円の需給バランスが変化しやすくなるからです。具体的には、以下のような要因が考えられます。
① 取引の減少
休暇により市場参加者が減り、投機的な取引が少なくなります。そのため、輸出入の決済や企業間の資本移動など、実需に基づく取引が市場を動かしやすくなります。
② 円転需要
米国債の利払いによって円に換える需要が増えることも円高要因とされます。
しかし、過去10年間の8月の貿易収支を見ると、2017年と2020年を除く年で赤字となっており、円安傾向が強まっています。貿易赤字は、輸入が輸出を上回る状態を指します。これは、円の売りが買いを上回ることを意味し、結果として円安圧力がかかるからです。
また、ドル建ての利払いを円に換えることはまれで、多くの場合はドル建てで再投資されます。従って、これらの要因が必ずしも円高に結びつくわけではありません。確かなことは、お盆の時期には取引が薄くなり、円の需給環境がより明確に表れることです。ボラティリティ(値動きの大きさ)が高まる可能性がある点には注意が必要です。
2023年の夏は、1898年の統計開始以来最も暑い夏となり、6月から8月の平均気温が過去最高を記録しました。東京でも記録的な暑さとなり、64日連続の真夏日が観測。今年の夏もエルニーニョ現象などの影響で暖かい空気に覆われやすく、全国的に平年を上回る高温が予想されています。
気象庁は、今年の夏(2024年6~8月)の天候予測を発表し、地球温暖化とエルニーニョ現象の影響で全国的に高温になると予想しています。今年の夏が昨年と同じ程度の高温になるかは不明ですが、偏西風の蛇行などの複数の要因が重なれば、記録的な暑さになる可能性も否定できません。
猛暑によって注目されるセクターや企業は以下の通りです。
猛暑によりエアコンや冷却設備の需要が増加します。これにより、電力会社(東京電力ホールディングス、関西電力、中部電力)やエネルギー関連企業(ENEOSホールディングスなど)の株価が上昇する可能性があります。
夏季には清涼飲料水やアイスクリームの需要が急増します。コカ・コーラや伊藤園、サントリーなどの企業が恩恵を受けるでしょう。
注目企業:サーティワン(2268)
サーティワンアイスクリームは、2023年12月期の連結決算で売上高が過去最高を更新し、好調な業績を継続しています。1974年の創業以来、50年間にわたり国内のアイスクリーム市場をリードしてきた同社は、女性中心だった顧客層の壁を打ち破り、顧客層を拡大しています。
また、アイスクリーム市場は拡大しており、一般社団法人日本アイスクリーム協会によると、2023年度の国内アイスクリーム販売実績は6,082億と過去最高を記録しました。しかし、コンビニやファストフードチェーンもアイスクリーム商品を強化しており、競争は激化しています。コロナ後の成長に向けて、サーティワンは値上げを実施しながらも既存のファンを維持し、男性客や海外市場の開拓を進めています。
エアコンや扇風機などの冷房機器を製造する企業も注目されています。特に、ダイキン工業やパナソニックなどの日本の家電メーカーが有利な立場にあります。
注目企業:ダイキン工業(6367)
ダイキン工業の業績は好調で、2024年3月期には売上高と営業利益が過去最高を記録しました。同社の主な事業は、空調・冷凍機事業、化学事業、その他に分類され、空調・冷凍機事業が主力となっています。
ダイキン工業の特徴は、グローバル企業であることです。空調機器を世界中に販売しており、化学事業では半導体や冷房ガスを開発しています。ダイキンは世界中の空調機器販売を通じて成長を続けていますが、競合他社との比較や市場シェアなどの分析も、投資家にとっては重要な検討事項となるでしょう。
※上記銘柄は、猛暑関連銘柄の一例であり、推奨銘柄ではございません。
2024年の夏のマーケット展望では、経済指標や中央銀行の政策、地政学的リスクなど、多くの要因が市場に影響を与えることが予測されます。さらに、サマーラリーによる株価上昇があるのか、猛暑による特定銘柄の注目など、多岐にわたる要素を考慮する必要があるでしょう。
Writer&Supervisor
執筆&監修者
山下 耕太郎
Koutarou Yamashita
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